2003 Fiscal Year Annual Research Report
極低温放射線検出器とX線光学系による多価イオンX線の高収量高分解能分光
Project/Area Number |
15740257
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池田 時浩 独立行政法人理化学研究所, 原子物理研究室, 研究員 (80301745)
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Keywords | 極低温検出器 / 多価イオン / X線分光 / 実験技術 / STJ / X線レンズ / マイクロキャピラリー / 中空イオン |
Research Abstract |
本研究は、極低温放射線検出器(STJ)とX線光学系(X線レンズ)を使って高エネルギー分解能でかつ高収量の原子物理実験を行うことを目的としている。今年度の研究内容は以下のとおりである。 1.X線レンズの設計:直径が数10μmのガラス製のマイクロキャピラリーを数10万本束ねた構造をしており、キャピラリー内をX線が全反射することでキャピラリーのカーブに沿ってX線を任意の方向に導くことができる(受注生産品)。本研究で用いるレンズは、入力側焦点距離:99mm、レンズ長:50mm、出力側焦点距離:98mm、エネルギー範囲:0.3keVから1.0keVであり、これらは真空槽の大きさの最小限界と使用する多価イオンの種類によって決定された。 2.クライオスタットの改造:STJを動作させるためには100ガウス程度の磁場を必要とするが、レンズの使用によりSTJをX線源に近づける必要がなくなったため、クライオスタット内に超伝導磁石を設置することで磁場の印可が可能となった。したがって、X線源に磁場の影響を与えることなく、また、超伝導磁石を使用することで小さなパワーで磁場をかけることに成功した。 3.X線レンズの位置・角度の微調整機構:真空中で5軸(縦、横、高さ方向、左右、上下回転)で制御できるレンズホルダーを考案、製作した。 4.レーザーを使ったX線源-レンズ-STJのアライメント:これら3つのエレメントを0.5ミリ程度の誤差で設置するためにレーザーと望遠鏡を組み合わせたアライメントシステムを構築した。また、冷却によりSTJの位置が変動することも補正した。 5.真空および冷却、超伝導磁石励磁テスト:超伝導磁石は0.2A程度の電流で動作するが、わずかながら常伝導部分のワイヤーで発熱が予想された。配線経路を調整することで温度上昇は液体ヘリウム温度のステージで100分の数度に抑えることに成功した。 6.現在、電子銃のX線を使って最終的な較正を行っている。
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