2003 Fiscal Year Annual Research Report
固液共存系における地震波減衰の定量的評価のための実験的・理論的研究
Project/Area Number |
15740271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武井 康子 東京大学, 地震研究所, 助手 (30323653)
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Keywords | 固液複合系 / 速度分散 / 減衰 / Q / squirt |
Research Abstract |
本研究が独自に開発した手法を用いて100kHz-1MHzの周波数帯域において、固液複合系の速度分散と減衰を測定した.まず、実験に用いる2種類の試料を選定した.一つは、二成分共融系の有機物で作ったアナログ部分溶融試料で、地殻深部や上部マントルに存在する部分溶融岩石と良く似たぬれ角を持つため、静水圧下におけるメルトポアの形状が再現できる.さらに、温度を変えることで、試料のぬれ角を変えることもできる.もう一つは金属の焼結体に流体を満たした試料で、部分溶融試料のポア形状に比較的近い構造を持つと共に、満たす流体の温度や種類を変えることで、流体粘性を変えることができる。100kHz-1MHzの帯域では、squirt flowメカニズムとBiotメカニズムという二つの減衰メカニズムが生じる可能性があるが、両者の特性周波数は流体粘性に対して正反対の依存性を持つため、後者の試料によって流体粘性の影響を調べることは、メカニズムを同定するために重要である。後者の試料を用いた実験の結果、流体粘性の小さい試料が緩和状態の弾性を、流体粘性の大きい試料が非緩和状態の弾性を示し、減衰がBiotメカニズムにより生じていることが分かった.また、球状粒子パッキングのトートシティを仮定して見積もったBiotメカニズムによる減衰・分散の理論的な大きさは、実験結果を良く説明した.部分溶融体の分散と減衰の大きさはこれに比べて二桁程度大きく、Biotメカニズムのみでは説明できない。さらに、,ぬれ角が小さいほど減衰が大きくなることや、液相分率依存性が比較的小さいという性質があることなども分かった.これらの結果は、二つの試料のボア形状の違い、及び/又は、固相の緩和の寄与の違いを示すものである。今年度は、以上に述べた実験と平行して乱100kHz以下の低周波帯域での速度分散と減衰測定のための装置開発を行なった.
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