2004 Fiscal Year Annual Research Report
大規模干拓堤防建設に伴う貝類群集の応答とその進化古生物学的応用
Project/Area Number |
15740308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 慎一 東北大学, 総合学術博物館, 助手 (70332525)
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Keywords | 有明海 / セマングム干拓 / 諫早湾干拓 / 二枚貝群集 / 貝化石 |
Research Abstract |
本研究では,日本と韓国の大規模干拓堤防建設に伴う生物群集の応答の普遍性を明らかにし,それを第四紀に見られる氷河性海水準変動に伴う化石群集の変遷と比較することで,急激な環境変動に対する生物群集の応答の実態を追求することを目的としている.本年度は,2004年8月に諫早湾干拓調整池における採泥調査を行ない,潮止めから7年後の干拓調整池内の底生生物現存量の変化を調べた.その結果,昨年に引き続きヤマトシジミやタイリクドロクダムシがわずかに採集されたものの,ほとんどは淡水生の貧毛類とユスリカ幼生などであり,非常に貧弱な底生生物相であることを確認した.また,韓国セマングム干拓地において,2004年9月に底生生物の定量調査を行なった.本海域では,2003年6月に潮受け堤防の北半分が閉め切られ,海域の塩分低下が確認されていたが,今回の調査により同海域の北側の干潟において二枚貝類の現存量が急激に減少していることが明らかになった. 一方,今年度より二枚貝化石群集の調査を開始した.2004年5月には熊本県荒尾市周辺において,ジオスライサーによる堆積物の採集が行なわれ,それに伴って得られた貝化石について調査を行なった.また,2004年9月には宍道湖底において同様にジオスライサーによる堆積物の採集が行なわれた.ここでは,約7000年前に当時の古宍道湾が砂州の発達により閉塞状態になることで,急激に塩分が減少しており,その過程において現在の諫早湾干拓およびセマングム干拓と同様の二枚貝類の変遷が見られている.これらの成果は,2004年9月に発行された日本古生物学会和文誌「化石」に特集号として掲載された他,これに関連した研究成果についても日本ベントス学会誌に原著論文を発表した.
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Research Products
(4 results)