2003 Fiscal Year Annual Research Report
マントルパイロキシナイトの高温高圧融解実験とマグマの生成
Project/Area Number |
15740318
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小木曽 哲 独立行政法人海洋研究開発機構, 固体地球統合フロンティア研究システム, 研究員 (60359172)
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Keywords | パイロキシナイト / 高圧実験 / 部分融解 / 実験岩石学 / マグマ / 火成岩岩石学 |
Research Abstract |
本研究は、マントルにおけるパイロキシナイトの部分融解過程を定量的に理解するために必要な、基礎的な実験岩石学データを蓄積することを目的としている。本年度は、ザクロ石と単斜輝石の2相で構成されるバイミネラリックパイロキシナイト(B-ECL1)についての高温高圧融解実験を無水条件下で行った。5GPaでのB-ECL1のソリダス温度は1525±25℃、リキダス温度は1660±10℃と決定された。融解の進行に従って単斜輝石が先に消え、リキダス相はザクロ石である。平衡共存する部分融解液は、低融解度から高融解度までの組成変化が少なく、全体として全岩組成に近い組成を持つ。ソリダスとリキダスの温度差が150℃以内と小さいことは、パイロキシナイト組成の特徴であり、過去の実験結果と調和的である。また、バイミネラリックパイロキシナイトの組成が高圧でのザクロ石-輝石熱障壁(thermal divide)上にあるために、部分融解液の組成も熱障壁によって制約され、その結果、全岩組成と部分融解液の組成差が小さくなると考えられる。これらの実験結果は、バイミネラリックパイロキシナイトが、比較的狭い温度範囲で、均質なマグマを大量に生成できることを示しており、洪水玄武岩の成因に重要な示唆を与える。この実験結果は、国際学術誌に投稿準備中である。 上記の融解実験と並行して、これまでに出版されているパイロキシナイト組成の岩石についての高温高圧融解実験のデータをコンパイルし、マントルにおけるパイロキシナイトの部分融解における相平衡関係の一般的な性質と特徴、パイロキシナイトが玄武岩質マグマの生成において果たす役割、についてのまとめを行った。このコンパイルの結果は、レビュー論文としてJournal of Petrology誌に投稿した(現在major revision中)。
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