2003 Fiscal Year Annual Research Report
極端に非平衡な過冷却液体及びガラスにおける結晶核の特異な生成と消滅
Project/Area Number |
15750006
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
水上 真由美 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教務職員 (40334552)
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Keywords | 結晶化 / ガラス転移 / 非平衡 / DSC / 相転移 |
Research Abstract |
液体は温度が下がるにつれてエントロピーが小さくなり,分子配置構造は次第に秩序化していくが,さらに温度を下げていくと,分子配置が変化する運動も次第に遅くなり,ついには分子配置がある程度の無秩序性を残したままに凍結するガラス転移を経て固体となる。しかし、大部分の分子運動が凍結したはずのガラス転移温度(T_<gα>)以下でも結晶化が進行することを見出した。 本研究では,冷却・昇温速度,試料保持温度と保持時間,等を厳密に制御しながら,ガラス転移温度(T_<gα>)以下での結晶核の生成と消滅現象を確認し,その解明を試みた。試料には水酸基を2つもつ2,2'-ジヒドロキシベンゾフェノンを取り上げ,昇華精製を2週間毎に行うことで,不純物効果を排除した。測定は示差走査熱量計(DSC)を用い,ガラス転移温度(T_<gα>=239K)以下での結晶核の生成と消滅の過程を追跡した。試料を融点(330K)より高い温度(343K)から装置の最低温度103Kまで急冷(200Kmin^<-1>)して昇温(10Kmin^<-1>)したところ,290Kで結晶化,330Kで融解が観測された。これはアニール時間を変えても同じ結果であった。一方,急冷し,ガラス転移温度直下の233Kで1min,10min,100minおいてから昇温したところ,結晶化も融解も見られず,316minアニールすることで,290Kで結晶化,330Kで融解が観測された。さらにアニール温度を変えて測定を行ったところ,173Kでのアニールにおいて,アニール時間1minでは結晶化が見られなかったにもかかわらず,5minから30minの場合は結晶化・融解が観測され,100minで再び結晶化が起こらなくなった。今後は分子内の水酸基の数を系統的に変えた物質(2-ヒドロキシベンゾフェノン,ベンゾフェノン)について研究を進めていく予定である。
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