2003 Fiscal Year Annual Research Report
溶液系における構造とダイナミクスの融合研究・統計力学を用いた記術
Project/Area Number |
15750010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西山 桂 大阪大学, 工学研究科, 助手 (40283725)
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Keywords | 溶媒和ダイナミクス / 積分方程式理論 / RISM理論 / 過渡的ホールバーン / 時間分解蛍光スペクトル |
Research Abstract |
溶質の瞬間的な電子状態変化に対する溶媒分子の応答を溶媒和ダイナミクスと呼び、溶液中における化学反応の動的過程と密接に関連している。まず我々は、時間分解ホールバーニング、蛍光スペクトル測定の実験を行った。 これらのスペクトル極大及びスペクトル不均一幅の緩和過程を実測すれば、溶媒緩和の時間相関関数Se(t)及びSw(t)が観測できる。ここでSe(t)は溶質-溶媒系の平均エネルギー緩和過程に、Sw(t)は溶媒配向分布の緩和(系のエネルギー分散の緩和)過程にそれぞれ対応している。我々の実験は、室温中の種々の極性溶媒中において、Sw(t)がSe(t)と比べて約一桁遅く緩和することを初めて見出した。溶媒応答にガウス型を仮定する従来の標準的な理論によると、両者は一致するはずである。 実験と並行して、積分方程式理論を使い、相互作用点モデル(RISM)理論による計算も行った。従来の取り扱いでは、系の時間発展を与えている動的構造因子F(k,t)に、site-siteSmoluchowski-Vlasov方程式を拡散極限で解いて用いてきた。 我々は最近、モード結合理論を用いてF(k,t)を求めると、数fsから数百ps以上に至る幅広い時間領域にわたって、緩和過程を分子論的に記述できることが分かったので報告する。 溶質には単イオンをはじめ、双極子などのモデル系を用いた。時刻t=0において、一部サイトの荷電を変化させた。溶媒にはアセトニトリル、水など極性溶媒を用いた。 各溶媒中において平均エネルギー緩和の時間応答関数Se(t)を計算したところ、とりわけ50fs以下の素早い時間領域ではガウス型に近似できる曲線を示し、レーザー分光実験でよく報告されている結果に対応している。その一方で、数10ps以上を要する遅い緩和成分が存在することも判り、我々の実験で観測されたエネルギー分散の緩和との関連性を検討している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] K.Nishiyama, T.Yamaguchi, F.Hirata, T.Okada: "Solute dependence of polar solvation dynamics studied by RISM/mode-coupling theory"Journal of Solution Chemistry. (投稿済).
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[Publications] K.Nishiyama, T.Yamaguchi, F.Hirata, T.Okada: "Solvation dynamics in water investigated by RISM/mode-coupling theory"Journal of Molecular Liquids. (投稿済).