2003 Fiscal Year Annual Research Report
解離ダイナミクスにおける化学結合切断の選択性への影響に関する研究
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15750018
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
赤木 浩 特殊法人日本原子力研究所, 物質科学研究部, 研究員 (70354818)
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Keywords | 選択的化学結合切断 / 二次元イオン画像観測 / 水分子 / 重水素置換体 / 選択的OD結合切断 |
Research Abstract |
本研究の目的は、部分重水素置換したアンモニア分子(NH_2DおよびNHD_2)などの小分子に対する、振動励起+電子励起の二段階励起による選択的な化学結合切断の発現機構および光分解ダイナミクスを明らかにすることで、より一般的な分子に対する二段階励起手法の有効性を検討することである。二次元イオン画像観測を用いて、解離生成した分子種の速度・角度分布を測定する。二次元イオン検出器の設計および装置発注を行い、さらに既存の真空反応装置のイオン検出部を改造し、二次元イオン検出器を設置する準備を進めている。 また、部分重水素置換した水分子HODの選択的OD結合切断の実験を行った。これまでに、OH伸縮振動励起状態(4v_<OH>)の紫外光分解により、OH結合のみがほぼ100%の確率で切断されることが知られている。一方、OD伸縮振動状態(3v_<OD>)の紫外光分解では、OD結合がOH結合よりも2〜3倍多く切断されることが報告されているが、OD結合のみの切断は未だ実現されていない。そこで、これまでに実験されたOD伸縮振動状態より、さらに高い振動状態(5v_<OD>)からの紫外光分解の実験を行った。 真空装置内に試料ガスをパルスバルブを用いて導入し、785nm付近の波長を持つ近赤外レーザー光を照射することでHODをOD伸縮振動励起した後、243.1nmの紫外レーザー光で紫外光分解した。生成したHおよびD原子は、共鳴(2+1)光子イオン化し、飛行時間型質量分析装置で質量選別して検出した。 その結果、D原子の生成は確認されたが、H原子は観測されなかった。イオン信号のノイズ強度を考慮して、OD/OHの結合切断比を>12と決定した。この結果から、5v_<OD>振動状態からの紫外光分解で、OD結合のみを9割以上の高確率で切断できることが分かった。
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