2004 Fiscal Year Annual Research Report
解離ダイナミクスにおける化学結合切断の選択性への影響に関する研究
Project/Area Number |
15750018
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
赤木 浩 特殊法人日本原子力研究所, 物質科学研究部, 研究員 (70354818)
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Keywords | 選択的化学結合切断 / 倍音振動励起 / 重水素置換体 / 水分子 / アンモニア分子 |
Research Abstract |
本研究の目的は、部分重水素置換したアンモニア分子(NH_2DおよびNHD_2)などの小さい分子に対して観測されている、振動励起+電子励起の2段階励起による選択的な化学結合切断の発現機構を明らかにし、より大きな、一般的分子に対する有効性を検討することである。 分子サイズに関する情報を得るために、アンモニアより小さな分子系である、部分重水素置換した水分子HODに対して研究を行った。昨年度、HOD分子のOD伸縮高振動状態(5v_<OD>)からの243nm紫外光分解の実験を行い、OD結合がOH結合の12倍以上の確率で切断されることを見出している。この系に対する量子波束計算を行うことで、選択的OD切断の発現機構について検討した。OD結合方向に広がった振動状態を、比較的長波長の光で電子励起することで、OD切断のみが起こる領域への励起が起こり、その結果、高い選択性が発現していることがわかった。 さらに、分解生成したD原子の共鳴多光子イオン化スペクトルのドップラー線形を解析して、OD切断ダイナミクスに関する情報を得ることで、HODについて観測された高い選択性が、より大きな、一般的分子系に対して発現するかどうか、その可能性について検討した。OD結合切断は非常に短時間で進行し、また、生成するOHラジカルはほとんど振動・回転励起していないことがわかった。即ち、OH結合部分は、OD切断過程にほとんど関与しておらず、OD結合部分だけでOD切断が進行していることになる。従って、今回観測された高い選択性は、OD結合部分に繋がる置換基の形状に依存しないと考えられ、大きな置換基がOD結合に付いた場合でも、同様の高い選択性が得られる可能性があることを示している。
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Research Products
(2 results)