2004 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒時間分解光電子画像観測法による水和電子の研究
Project/Area Number |
15750021
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西澤 潔 独立行政法人理化学研究所, 鈴木化学反応研究室, 先任研究員 (50280730)
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Keywords | 液体分子線 / 光電子分光 / 流動帯電 |
Research Abstract |
今年度は,昨年度開発を行った液体分子線源を用いて,液体からの光電子放出について半球型電子エネルギー分析器を用いて,検討をおこなった.電子の運動エネルギーを測定する光電子分光においては,光電子の運動エネルギーを変化させてしまう光電子・気体分子間の衝突がないことが要求される.また,電子エネルギー分析器内部の電子検出器であるマイクロチャンネルプレート付近ではより良い真空度が要求される.一方,液体分子線の周辺では,液体からの分子の蒸発により,気体分子の密度が高く,真空度は光電子分光において要求されるレベルに比べはるかに悪い.そのため,液体分子線から電子検出器までの光電子飛行領域に多段の差動排気システムを持つ光電子分光装置を用いた.液体分子線と垂直に1ミリ離れた位置に差動排気のための初段のアパーチャーを設置することにより,光電子と蒸発分子との衝突が無視できる状況が実現できることがわかった。 この光電子分光装置内で,電解質水溶液の液体分子線を真空チャンバー内に噴出させ,液体分子線源から下流数ミリの位置で波長30.38nmのHe(II)真空紫外光を照射することにより,液体からの光電子放出を観測することに成功した.電解質を用いたのは,液体分子線源のオリフィス部での電気二重層形成に由来する流動帯電の影響を低減するためである。観測された光電子スペクトルには,液体分子線から蒸発した水分子からのスペクトル線が極めて強く観測されたため,液体からの光電子スペクトルの線型の判別は困難であった.液体からのスペクトルにおける線型の評価においては,真空紫外光のビームサイズ,電子エネルギー分析器の見込角等について検討を重ねる必要があることが分かった.
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