2003 Fiscal Year Annual Research Report
鎖状ペプチドの直接的、高立体選択的修飾法の開発と応用
Project/Area Number |
15750033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大井 貴史 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80271708)
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Keywords | 鎖状ペプチド / 光学活性四級アンモニウム塩 / 相間移動反応 / アルキル化反応 / ジアステレオ選択性 / 不斉四級炭素構築 / α-アミノ酸アミド |
Research Abstract |
初年度の研究計画に従い、末端グリシン残基をシッフ塩基とすることで活性化したジペプチドを典型的な基質とし、N-スピロ型光学活性四級アンモニウム塩を触媒とする相間移動条件下でのN末端の不斉アルキル化を試みた。ベンジル化反応をモデルとした反応条件の最適化の過程で、トルエン溶媒中、50%水酸化カリウム水溶液を塩基として用い0℃で反応を行えば、既存のアミノ酸ユニットの不斉中心の立体化学は保持されたまま、アミド水素引き抜きによるN-アルキル化の関与もなく反応が進行することがわかった。さらに、既存のアミノ酸のキラリティーと触媒のキラリティーの関係を明らかにするとともに、触媒のビナフチル骨格の3,3'位のフェニル基の3,5位に立体的に嵩高いtert-ブチル基を導入し、これを放射状に伸ばしていく戦略で深いキラルポケットを形作ることで効率良い不斉転写を実現し、ほぼ完全なジアステレオ選択性の獲得に成功した。続いて、各種の天然α-アミノ酸残基を有するジペプチド誘導体を用い、本反応の反応性及び選択性はアミノ酸側鎖の構造にほとんど影響を受けないことを明らかにした。同時に、様々な親電子剤(アルキルハライド)との反応を検討し、本システムが十分な一般性を備えていることを明確に示した。これらの知見を基に、末端に置換基を有するα-アミノ酸ユニットを持つジペプチドのアルキル化反応による不斉四級炭素構築をも実現した。これは、ペプチド鎖への非天然型α,α-ジアルキル-α-アミノ酸の簡便な導入法を提供するものである。この手法を連続的に繰り返すことによる、オリゴペプチドの立体選択的合成の可能性の一端を示す結果も既に得ていることを付け加えたい。現在は、そのさらなる展開に加え、一般的なα-アミノ酸アミド誘導体のエナンチオ選択的官能基化とその合成化学的応用についても検討している。
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[Publications] Takashi Ooi, Eiji Tayama, Keiji Maruoka: "Highly Stereoselective N-Terminal Functionalization of Small Peptides by Chiral Phase-Transfer Catalysis"Angewandte Chemie International Edition. 42・5. 579-582 (2003)
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[Publications] Takashi Ooi, Daiki Sakai, Mifune Takeuchi, Eiji Tayama, Keiji Maruoka: "Practical Asymmetric Synthesis of Vicinal Diamines through the Catalytic Highly Enantioselective Alkylation of Glycine Amide Derivatives"Angewandte Chemie International Edition. 42・47. 5868-5870 (2003)