2003 Fiscal Year Annual Research Report
オゾンを用いる新しい異常高原子価鉄酸化物の合成と物性・応用に関する研究
Project/Area Number |
15750050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 直顕 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (70346047)
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Keywords | オゾン / 薄膜 / メスバウア分光 / 異常高原子価鉄酸化物 |
Research Abstract |
異常高原子価(4〜6+)をとる鉄イオンを含む酸化物は、鉄イオンの電荷の不均化など、特有の興味深い性質を示すことが知られている。しかしながら、高酸素圧等の特殊な環境下での反応を必要とするため、良質試料合成の難しさから研究が盛んとはいえない状況にあった。一方、オゾン(O_3)は強力な酸化力を持っているが、酸化反応が物質表面のみにとどまり、材料合成への応用は限られていた。本研究では合成法を工夫することにより、オゾンを積極的に利用した新規の異常高原子価鉄イオンを含む酸化物の合成を行った。その方法として、まず薄膜法を検討した。 熱力学的非平衡状態で作製される薄膜は、バルクでは固溶限界を超える物質でも、安定化できる可能性があり、新物質の合成と新奇な物性の発現が期待される。SrFe^<4+>O_3(反強磁性金属)-BiFe^<3+>O_3(反強磁性強誘電体)固溶体薄膜の作製を試みた。高圧合成法でも、固溶体を形成しない系であるが、薄膜の作製に成功した。レーザーアブレーション法により、オゾンを10%含んだ酸素ガスを膜面に吹き付けながら成膜し、そのまま冷却した。膜はわずか数十nmの厚さであるので、容易く膜全体を酸化することができた。格子整合の良いSrTiO_3単結晶基板上に作製した膜は、Bi量が大きくなるにつれ、格子定数も単調に大きくなった。このとき薄膜の導電性は金属的から絶縁体に系統的に変化した。とくにSr_<2/3>Bi_<1/3>FeO_3付近の組成では、金属絶縁体転移的な導電特性が観測された。メスバウアー分光測定からは、Feは平均価数3.67+に近く、室温で常磁性の状態であることが分かった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Akao T, Azuma Y, Usuda M, Nishihata Y, Mizuki, J, Hamada N, Hayashi N, Terashima T, Takano M.: "Charge-ordered state in single-crystalline CaFeO_3 thin film studied by x-ray anomalous diffraction."Physical Review Letters. 91. 156405-156405 (2003)