2004 Fiscal Year Annual Research Report
カルコゲンアンカーを持つルテニウム(II)錯体によるアルコール類の直接官能基化
Project/Area Number |
15750079
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
平野 雅文 国立大学法人東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助教授 (70251585)
|
Keywords | ルテニウム / カルコゲンアンカー / 炭素-水素結合の切断 / 触媒的異性化 / アリル錯体 |
Research Abstract |
平成16年度の研究では、酸素などのカルコゲン原子とルテニウム(II)との結合をアンカーとした炭素-水素結合などの切断反応により、選択的分子変換反応を目的とした。Ru(η^4-1,3,5-C_8H_<10>)(PEt_3)_3(1)は、アリルアルコール誘導体の異性化触媒となり、例えば3-ブテン-2-オールから触媒的に2-ブタノンを与えることを見いだした。錯体1とアリルアルコールの化学量論的反応を行ったところ、アリルアルコールの脱水素反応が進行し、1,3-および1,5-シクロオクタジエンの発生を伴ってアクロレインが配位したRu(η^4-CH_2=CHCHO)(PEt_3)_3(2)が定量的に生成した。また、錯体1と3-ブテン-2-オールとの反応では、Ru(η^4-CH_2=CHCOMe)(PEt_3)_3(3)が収率64%で生成した。すなわち、1級および2級アルコールとのいずれの反応においても脱水素反応したエノン錯体が得られた。錯体3とアリルアルコールの反応では、2-ブタノンが28%生成するとともに、アリルアルコールが脱水素された錯体2が収率31%で生成した。これらの事実は、アリルアルコールの異性化反応では脱水素反応によるエノンが生成し、外部のアリルアルコールにより水素化されていることがはじめて明らかとなった。同様の異性化反応機構はTrost教授らにより1993年に提唱されているが、本研究により、はじめてその中間体を捕らえ機構を実証した(アメリカ化学会Organometallics誌に掲載)。また、ルテニウム-アリールオキソ結合を有する各種RuCp(OAr)(PPh_3)_2錯体を合成し、その反応性について検討したところ、2-アリルフェノキソ基を持つ錯体において、アリル位の炭素-水素結合の切断反応が進行し、η^3-アリルフェノール基をもつRuCp(η^3-C_3H_4C_6H_4OH-2)(PPh_3)(4)が得られた。(第51回有機金属化学討論会)。このように平成16年度の研究では、(1)これまで未解明であった不飽和アルコールの異性化反応機構の中間体と考えられる錯体を単離し、その機構が、脱水素ならびに分子間水素移動を含む機構であることが明らかとなった。(2)シクロペンタジエニル基を持つルテニウム錯体上での炭素-水素結合の切断反応を開発した。
|
Research Products
(3 results)