2003 Fiscal Year Annual Research Report
新規な触媒機構に基づくアルキルハライドによるクロスカップリング反応系の創出
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15750086
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺尾 潤 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00322173)
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Keywords | アルキルハライド / グリニャール試薬 / クロスカップリング反応 / ニッケル触媒 / パラジウム触媒 / ブタジエン / アート型錯体 / アルキルフルオリド |
Research Abstract |
遷移金属触媒を用いる有機ハライド類と有機典型金属試薬とのクロスカップリング反応は、炭素-炭素結合生成の最も一般的な手法として合成反応に広く利用されている。この反応には、種々の炭素官能基を有する有機典型金属試薬を利用することができるが、有機ハライドの適用範囲に大きな制約があり、一般にアルキルハライド類を炭素骨格の基本となるメチレン鎖の構築に利用することは困難と考えられてきた。今回私は、従来のクロスカップリング反応に用いられてきたホスフィンやアミン等のヘテロ元素化合物の代わりに1,3-ブタジエンを添加剤として用いることにより、ニッケル及びパラジウムのアート型錯体を鍵活性種とする全く新しいタイプのクロスカップリング反応が進行することを見出した。本触媒系は種々のアルキルハライド類の他、アルコールから容易に誘導できるアルキルトシラートやメシラート類にも適応可能である。また本触媒系を応用することにより、アルキルクロリドおよび極めて不活性と考えられるアルキルフルオリドを用いたクロスカップリング反応に世界で初めて成功した。有機金属試薬としては入手が容易なGrignard試薬の利用が可能である他、有機亜鉛試薬を用いても効率よく反応が進行することから、種々の官能基を持つ反応剤を利用することができる。また、本反応は安価な2価金属塩と1,3-ブタジエンを用いる触媒系であることから、大規模合成に適した環境調和型の反応としての利点も有している。さらに、分子内にブタジエン部位を二カ所もつビスジエンを添加剤として用いることにより、添加量の大幅な減少、反応時間の短縮、反応効率の向上に成功した。反応機構においては従来型のクロスカップリング反応の鍵過程である0価錯体への酸化的付加の段階を経ず、ビスアリル配位子を持つアート型錯体を経て進行することを明らかにした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Jun Terao, Aki Ikumi, Hitoshi Kuniyasu, Nobuaki Kambe: "Ni- or Cu-Catalyzed Cross-Coupling Reaction of Alkyl Fluorides with Grignard Reagents"J.Am.Chem.Soc.. 125(19). 5646-5647 (2003)
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[Publications] Jun Terao, Akihiro Oda, Hitoshi Kuniyasu, Nobuaki Kambe: "Nickel-Catalyzed Dimerizative Carbosilylation of 1,3-Butadienes with Chlorosilanes and Grignard Reagents"Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.. 42(29). 3412-3414 (2003)
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[Publications] Jun Terao, Yoshitaka Naitoh, Hitoshi Kuniyasu, Nobuaki Kambe: "Pd-catalyzed Cross-coupling Reaction of Alkyl Tosylates and Bromides with Grignard Reagents in the Presence of 1,3-Butadiene"Chem.Lett.. 32(10). 890-891 (2003)
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[Publications] Jun Terao, Hiroyasu Watabe, Nobuaki Kambe: "Titanocene-Catalyzed Alkylation of Aryl-substituted Alkenes with Alkyl Halides"Bull.Chem.Soc.Jpn.. 76(11). 2209-2214 (2003)
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[Publications] Jun Terao, Yingshi Jin, Kazushi Torii, Nobuaki Kambe: "Reaction Pathways of Zirconocene-Catalyzed Silylation of Alkenes with Chlorosilanes"Tetrahedron. 60(6). 1301-1308 (2004)
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[Publications] Shinsuke Nii, Jun Terao, Nobuaki Kambe: "Titanocene-Catalyzed Regioselective Carbomagnesation of Alkenes and Dienes"J.Org.Chem.. 69(2). 573-576 (2004)