2003 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性カルコゲン化合物を用いた不斉Mizoroki-Heck型反応
Project/Area Number |
15750093
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
平林 一徳 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (40343397)
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Keywords | Mizoroki-Heck型反応 / テルロニウム塩 / パラジウム触媒 / 酢酸銀 / オレフィン |
Research Abstract |
近年の不斉合成反応の発展はめざましく,不斉補助基や不斉配位子の開発が盛んに研究されている。一般に配位子としてリン化合物が用いられるが,最近配位能を持つ窒素や酸素元素を有する化合物も配位子として利用可能なことが明らかにされてきた。一方,カルコゲン元素(硫黄・セレン・テルル)は酸素元素と同族にも関わらず,これらの元素を有する化合物を配位子として利用した反応は少ない。しかし,カルコゲン元素は酸素元素と同様,配位能を有するので,配位子として十分利用可能だと考えられる。 一方,遷移金属触媒を用いた炭素-炭素結合形成反応では,有機金属反応剤と有機物の脱離基の選択が重要であり,様々な組み合わせが検討されてきた。有機金属反応剤としては,リチウムをはじめ様々な元素が利用可能である。カルコゲン元素に注目すると,高周期になると金属性が増すので有機金属反応剤としての利用が期待できる。 申請者のグループでは,光学活性カルコゲン化合物の合成・光学分割に関し研究しており,光学活性体の単離法を確率している。そこで本研究では,カルコゲン化合物を有機金属反応剤として用いた反応を検討し,さらに光学活性体を用い不斉反応に展開する。 まず,ラセミ体のテルロニウム塩を用いて反応を検討した。酢酸パラジウム存在下,PhMe_2TeIとアクリル酸ブチルとの反応を行ったところ,3-フェニルプロペン酸ブチルが定量的に得られ,テルロニウム塩を用いてMizoroki-Heck型反応が進行することがわかった。さらに,酢酸銀を添加剤として用いることにより,触媒量の酢酸パラジウムでも触媒的に反応が進行した。また,この反応において,酢酸銀はテルロニウム塩に対して3当量必要なことがわかった。この反応では,電子求引性または電子供与性の置換基を有するオレフィンを用いても収率よく対応する生成物が得られた。 現在,光学活性テルロニウム塩を用いて,不斉Mizoroki-Heck型反応を検討しており,7%eeと低いながらも,不斉反応が進行することがわかった。
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