2004 Fiscal Year Annual Research Report
新規なシクロブタン誘導体の合成法に基づくカリオフィレン型テルペノイドの合成
Project/Area Number |
15750094
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高尾 賢一 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (70287481)
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Keywords | ペスタロチオプシン / 天然物合成 / 不斉合成 / シクロブタン / Oppolzerのキラル補助基 / [2+2]環化付加反応 |
Research Abstract |
最近,イチイ科植物から抽出されたタキソールが,卵巣癌などに著効を示す医薬品として注目を集めている。このイチイに寄生する微生物の代謝産物の中から,高度に酸化されたカリオフィレン型セスキテルペノイドであるペスタロチオプシン類が単離・構造決定された。その基本構造は,今までに例のない三環性骨格を有している。また生物学的性質についても,免疫抑制活性を有することが報告されており,とても興味深い有機化合物である。本研究は,ペスタロチオプシン類を化学的に全合成することを目的とした。ペスタロチオプシン類が有する炭素四員環骨格は,重要な生物活性を示す有機化合物中にしばしば見い出される部分構造であり,その光学活性体としての合成法の確立は,今日の有機合成化学において重要な課題のひとつである。昨年度,本申請者は独自のコンセプトによって,光学活性なシクロブタノール誘導体の合成法の開発に成功した。光学活性源として,安価で容易に入手可能なカンファースルホン酸を用い,Oppolzerのキラル補助基に変換した後,プロピオル酸と縮合させた。ルイス酸(四塩化ジルコニウム)を触媒に用いて,ケテンシリルアセタールとの[2+2]環化付加反応を行い,シクロブテン体を得た。これを1,4-還元,続く高立体選択的なプロトン付加により,ほぼ単一のジアステレオマーとしてシクロブタン誘導体に変換した。今年度は,さらなる合成研究を展開させた。すなわち,高い光学純度にて得られたシクロブタノール体を官能基変換反応によって二環性ラクトン体へと誘導した。エポキシの開環を伴うカップリング反応,アルデヒドとの立体選択的なアルドール反応を行い,標的物質の全骨格炭素原子を揃えた化合物の合成を達成した。この化合物は,ペスタロチオプシン類の重要な合成中間体になり得るものと考えている。
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