2003 Fiscal Year Annual Research Report
X線結晶構造解析によるキトサン複合体中における分子間相互作用の解明
Project/Area Number |
15750098
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
野口 恵一 東京農工大学, 機器分析センター, 講師 (00251588)
|
Keywords | キトサン / 多糖 / バイオマス / X線回析 / 繊維回析 / 結晶構造 / 高分子錯体 / 水素結合 |
Research Abstract |
平成15年度前期は、主にキトサン/HI錯体について実験室のX線源を利用した予備測定により試料調整条件を検討し、放射光での測定に適した試料の作成方法を確立した。また、予備測定により得た繊維回折データを基に結晶構造解析を進め、実測強度分布をほぼ説明可能な複数の初期構造モデルを得た。 本年度後期にSPring-8のBL40B2ビームラインのビームタイム3シフト(24時間)の配分を受けた。このビームタイムを利用して、キトサン/HI錯体の繊維回折データの収集を行った。その結果、実験室の測定ではS/N比が低く、精度の高い強度データを得ることのできなかった奇数層線の回折点に関しても、詳細な構造解析に十分な回折データを得ることに成功した。実験室のデータのみによる解析では最終的な構造モデルを一つに絞り込むまでには至らなかったが、本年度放射光を利用して収集した回折データに基づき構造解析を進めたところ、キトサン/HI錯体の結晶構造を一義的に決定することができた。 構造解析の結果、キトサン/HI錯体結晶中には結晶学的に2種類のヨウ素イオンが存在し、それらヨウ素イオンは互いに約5Åの間隔で、キトサンの分子鎖軸方向と平行に配列し、ヨウ素イオンによるカラムを形成していた。一方のヨウ素イオンは、その周囲にある3本のキトサン分子鎖のアミノ基と水素結合をしており、他方のヨウ素イオンは1つのアミノ基と2つのキトサン分子の6位水酸基との間に水素結合を形成し結晶構造を安定化していた。さらに、キトサン分子鎖のアミノ基と6位水酸基との間にも分子間水素結合が形成されていた。 キトサンは多くの有機酸、無機酸、遷移金属塩と結晶性錯体を形成することが知られていたが、その構造の詳細、特に分子間相互作用に関する情報は全く得られていなかった。本研究により、キトサンと酸との間の分子間相互作用について初めて明らかにすることができた。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Amornrat Lertworasirikul: "Molecular and Crystal Structure of Chitosan/HI Type I Salt Determined by X-ray Fiber Diffraction"Carbohydrate Research. 339. 825-833 (2004)
-
[Publications] 野口 恵一: "繊維状高分子の構造解析"高分子. 53. 74-78 (2004)