Research Abstract |
ナノ磁性粒子はこの10年間に急速に発展した分野であり,記録材料,細胞のラベリングや分離,生体関連物質の分離,薬物輸送,汚水処理,有用物質の回収,濃縮といったさまざまな分野への応用展開が試みられている。これらの応用において,粒子サイズおよび単分散性の制御,媒体中での分散安定性,環境安定性(耐pH,溶解性)などが磁性ナノ粒子の応用開発において重要な技術となっている。ナノ磁性粒子の安定化,機能化に関しては,有機低分子の化学修飾,ポリマーコート,界面活性剤の利用,シリカコートなどの様々な手法が検討されている。本研究では,末端反応性ポリマーを磁性ナノ粒子表面に直接グラフト化することで,従来手法とは異なる特色を有する磁性ナノ粒子の開発および応用展開について検討することを目的とした。ポリマーグラフト化磁性ナノ粒子は,3-メルカプトプロピルトリメトシキシシランをテロゲンとしたビニルモノマーのテロメリゼーションにより末端反応性のポリマーを得た後,磁性粒子へグラフト化することにより調製した。1-ビニルイミダゾール(VIm),4-ビニルピリジン(4VP),N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)など数種のモノマーについてテロメリゼーションが適用できることが判った。 VImポリマーをグラフト化させた磁性ナノ粒子は,水中に分散し,金属イオンを選択的に吸着することから,金属イオンの磁気分離に利用できることが判った。ポリマーはpH3.5-10の範囲で化学的に安定であり,幅広いpH範囲で金属吸着が可能であることが判った。(Chem.Mater.,2004に掲載)また,4VPポリマーをグラフト化した磁性ナノ粒子は,4VPを4級化することで界面の極性を制御可能であり,非極性溶媒から極性溶媒まで様々な溶媒に分散する磁性ナノ粒子を得ることができた。(J.Nanosci.Nanotech.,2005に掲載)
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