2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15760013
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
太田 昇 財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門II・生物・医学グループ, 協力研究員 (90353507)
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Keywords | 皮膚 / 角質層 / 細胞間脂質 / 小角X線回折 / マイクロX線ビーム / 放射光 |
Research Abstract |
哺乳動物の最外層に位置する皮膚角質層には有害分子あるいは細菌などの侵入を防ぐバリア機能、および水分を角質中に保持することで乾燥から生体を守る水分保持機能がある。皮膚角質層を構成する角化細胞の隙間にある脂質は細胞間脂質と呼ばれ、脂質のシートが十数層積層したラメラ構造である。微小領域のラメラ構造の精密な構造解析が、機能を解明するために必要不可欠である。本年度は、マイクロX線ビームの最適化、生きたマウス皮膚への適応、および散乱像の解析方法の提案を行った。 X線源としては、SPring-8のBL40XUの放射光光源を用いた。このビームラインは、2枚の全反射ミラーによる集光で得られる高密度のX線が得られる。このミラーの下流に必要な径のピンホールを置くことで高いフラックスのマイクロX線ビームを得た。このマイクロX線ビームの評価には毛髪のキューティクルを用いた。5μmに絞ったX線ビームならば、毛髪の外側5μmの厚さであるキューティクルのみの散乱像が得られる。得られた散乱像の解析法を提案することによって、これまでは明らかに出来なかったキューティクルの詳細な構造情報が得られることを明らかにした。したがって、バックグラウンドが押さえられた良質な散乱像をマイクロレベルの領域から得られると示した。 皮膚角質層は、十数μmの厚さでかつ階層構造を有する最外層の構造体である。皮膚表面から深さ方向へのマイクロX線ビームの走査で、皮膚角質層およびその下層の真皮の特徴的な小角散乱像を得ることを明らかにした。SPring-8の高密度なX線を用いることはマイクロX線ビームが得られるばかりでなく、生きた麻酔下でマウスに対して短時間で散乱実験が行えることを示した。また、得られた散乱像を細胞間中のトリラメラ構造モデルを用いる事で詳細な解析できることを提案した。これらの研究により、皮膚の角化による細胞間脂質ラメラ構造の経時変化を明らかにした。
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Research Products
(6 results)