2003 Fiscal Year Annual Research Report
有機/有機ヘテロ接合界面における欠陥準位のXPS観測
Project/Area Number |
15760018
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
櫻井 岳暁 筑波大学, 物理工学系, 助手 (00344870)
|
Keywords | 有機エレクトロニクス / 界面準位 / 配向制御 |
Research Abstract |
本研究では、接合界面のポテンシャルが欠陥準位に蓄積する電荷によって変化することに着目し、これを直接XPSで観測するバイアス印加XPS法を用い、有機/有機ヘテロ接合界面の欠陥準位を検出することを目指している。本年度は、高エネルギー加速器研究機構BL-11Bにおいて2keVの励起光源を用いたXPSの観測を行い、銅フタロシアニン、鉛フタロシアニンの正孔輸送層、PTCDAの電子輸送層、そして金属電極からなるヘテロ接合界面から放出される光電子検出を試みた。 銅フタロシアニン薄膜上にPTCDA薄膜を膜厚50Å以上形成したヘテロ接合では、銅の内殻準位からの光電子を検出できなかった。一方、鉛フタロシアニン薄膜上ではPTCDA薄膜を100Å以上形成しても、十分な強度の鉛の光電子の検出が可能であった。これは、フタロシアニンの中心金属である鉛と銅の光イオン化断面積が大きく異なるためである。一方、これらの試料上にMg等金属電極を15Å以上形成後すると、いずれの正孔輸送層の場合にも接合界面からの光電子を検出する事ができなかった。これは、フタロシアニンの中心金属の密度が小さいことや、光強度の不足による。なお、金属電極に電圧を印加するためには、最低30Å以上の膜厚が必要になるため、今後、光強度の一桁大きいBL-2Aを利用した実験、ならびに中心金属の密度の高くなる有機分子の探索を行う。 一方、本研究では最終的に、配向を制御した有機薄膜を用いた有機/有機ヘテロ接合界面の欠陥準位を検出することを計画している。このため、実用的なガラス基板上におけるフタロシアニン配向制御法の開発を行った。その結果、PTCDA配向層を5分子層ガラス基板に蒸着すると、フタロシアニンの分子面が基板面に対し垂直から平行に変化することが明らかになった。今後この技術の開発をさらに進め、高度に配向を制御した試料の欠陥準位観測を行う予定である。
|