2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15760036
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小椎八重 航 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20273253)
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Keywords | 強相関電子系 / 水和コバルト酸化物 / 異常ホール効果 |
Research Abstract |
本年度は,巨大な熱電応答を示すNa_xCoO_2の電子状態を詳細に調べた.この系の伝導電子は,磁場に対しても極めて奇妙かつ巨大な応答を示す.すなわち,Na_<0.68>CoO_2のホール係数(R_H)は室温付近では正の値を示し,温度の上昇とともに線形に増大し,その大きさは実にドルーデ理論の予測値の8倍に至る.この興味深い電子物性は,CoO_2層が担っている.CoO_2層はコバルトイオンが作る三角格子を含む.我々は,この三角格子が,伝導を担う3d電子の軌道縮退と電子雲の異方性のため,4つの篭目格子に分解されることを明らかにしてきた.ホール効果など,伝導の磁場応答を与えるのは,格子上の「閉じた経路」を運動する電子である.「閉じた経路」が三角形を描くとき,高温の極限でR_Hに線形の温度依存性が導かれる.三角格子の上には,三角形の「閉じた経路」だけでなく,ひし形や台形の「閉じた経路」を含んでおり,これらはR_Hの線形の温度依存性を壊す.篭目格子は,ひし形や台形の「閉じた経路」を含まない.我々が見出した篭目構造および電子の飛び移り積分の符号は,実験で観測されるR_Hの温度依存性をよく説明する. 低温の伝導現象は,高温のものと比べると,より小さなエネルギースケールの相互作用に強い影響を受けるようになる.我々は,Na_xCoO_2が含むCoO_2層の歪みが導く結晶場とスピン軌道相互作用の効果を取り込み,準粒子の運動を記述する有効ハミルトニアンを構築しその電子状態を調べた.その結果,クーロン相互作用が強くなると,ラッティンジャー総和側を満たしつつも,準粒子のフェルミ面は一電子状態のものと比べて著しくその形状を変えてしまうことが明らかとなった.この有効ハミルトニアンを用いて,超伝導不安定性を調べた研究には2004年のPhysical Review Lettersに出版されている.
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Research Products
(2 results)