2003 Fiscal Year Annual Research Report
熱物性を考慮したダイヤモンド切削の分子動力学シミュレーション
Project/Area Number |
15760072
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原田 宏幸 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90301936)
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Keywords | 分子動力学 / 切削 / ダイヤモンド / 熱伝導率 / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究の目的は,ダイヤモンドの熱物性が他の工具材料と著しく異なることが,金属切削におけるダイヤモンド工具の優れた特性に及ぼす影響を調査することである.そのためには熱の状態をより正しく表すシミュレーション手法が必要であることから,まず古典分子動力学法を用いたシミュレーションにおいて,金属特有の現象であり通常の分子動力学法では考慮されない自由電子による熱輸送を含めて,金属の熱物性を簡便な方法で表現することに取り組んだ.過去に行った研究において,周辺原子の速度を平均化する手法によってフーリエの熱伝導法則に近い挙動を表現できるのではないかという見通しを持っていたが,当時はパーソナルコンピュータで計算できる程度の小さな系でしか検討できなかった.今回科学研究費補助金の助けを得て,スーパーコンピュータにより,より大きな系を対象に検討を行った. 銅結晶格子の(1,1,1)面における一次元熱伝導モデルにより検討した結果,原子数50×100個程度の系においても,系全体の温度が与えられた境界条件とは一見無関係に,一方向に変化していく傾向があるなどの不都合が明らかになり,小さな系で有効であった速度の平均化手法は,必ずしもそのままではより大きな系には適用できないことが明らかとなった.この問題点を改善するため,速度を二乗平均する方法や,乱数により速度を再配分する方法など,新たな手法をいくつか提案し検証を行っているが,現在までのところ満足できる結果は得られていない.また提案している方法のいくつかは当初の予想よりも計算量が多くなり,切削シミュレーションに用いるには不向きであると考えている.これらのことを踏まえ,今後も引き続き熱伝導率の表現と計算負荷のバランスが取れた手法を模索していく予定である.また以上のような経過から,現在までのところ外部に発表できるような成果を得るには至っていない.
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