2004 Fiscal Year Annual Research Report
オニオン構造ナノ分子ベアリングによる高真空下固体潤滑システムに関する研究
Project/Area Number |
15760089
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平田 敦 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (50242277)
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Keywords | オニオン構造 / ナノ分子 / ベアリング / 固体潤滑 / カーボン |
Research Abstract |
オニオン構造ナノ分子であるカーボンオニオンの生成法のひとつにダイヤモンドクラスタを加熱する方法があるが,約1800℃もの高温を要する.そこでこの手法により,低温でカーボンオニオンを合成するため触媒を用いることを考えた.鉄を触媒としてダイヤモンドクラスタを不活性雰囲気中で赤外線加熱することによりカーボンオニオンを低温合成し,その潤滑特性を検討した.ダイヤモンドクラスタを硝酸鉄九水和物溶液に超音波攪拌し,乾燥して鉄触媒を均一に混合した.その後,800〜1400℃で1〜30分間の赤外線加熱を行った.加熱後には触媒を取り除くために塩酸により酸処理を行った.生成物を透過型電子顕微鏡により観察した結果,ダイヤモンドクラスタ内のダイヤモンド構造がグラファイト構造へ遷移していることを確認し,生成物は多層殻状構造のカーボンオニオンであると同定した.次に,ボールオンディスク型摩擦試験機により摩擦摩耗試験を行い,触媒比,加熱温度,時間の影響を評価した.その結果,触媒比1:1000,加熱温度1200℃,加熱時間1分間で得られた生成物が最も優れた摩擦摩耗特性を示し,大気中および真空中において摩擦係数はそれぞれ約0.08,0.15であり比摩耗量はそれぞれ5.01×10^<-8>,6.38×10^<-7>[mm^3/N・m]であった.この値はグラファイトより優れた摩擦摩耗特性であり,また二硫化モリブデン,二硫化タングステンと同等あるいはそれ以上の特性であることから,触媒を用いて低温合成したカーボンオニオンは真空中で有用な固体潤滑材としての適用可能性を確認した. また,酸素雰囲気による加熱もしくは過酸化水素による酸化によりカーボンオニオンの精製を試みたが,その固体潤滑特性に顕著な特性変化は見られなかった.さらに,金とカーボンオニオンの複合によりカーボンオニオン固体潤滑層の長寿命化が可能であることを見いだした.
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Research Products
(3 results)