Research Abstract |
本研究は,メートルオーダの高分解能な映像レーダ(SARなど)システムにより,森林や海洋などの分布ターゲットを撮する場合の, A.テクスチャの空間的相関 B.テクスチャと偏波の関係 C.テクスチャとスペックルの関係 についての理解を深めることを目的としている.このうち,本年度は主としてBの『テクスチャと偏波の関係』について解析を進めた. 高分解能なレーダ画像においては,テクスチャ,すなわちターゲットの空間的構造に起因した画像強度の揺らぎが重要な意味合いを帯びる.すでに,後方散乱断面積そのものと偏波の関係に関する解析,及びその応用は成熟の域に達してきたといえるが,その空間的な揺らぎについては,"テクスチャは偏波によって変化するのか"という根本的なところで,未だに議論の余地がある.これに対し,本研究では,異なる散乱機構の混在によりテクスチャの偏波依存性を説明するモデルを導出し,これをターゲット分解と呼ばれる手法により裏付けることに成功した.ターゲット分解から得られるエントロピー値と,テクスチャのHH/HV/VV偏波での相違の相関性を見出した本成果は,表面散乱や体積散乱,リフレクタ的な2回反射などが混在する状況であるほど,テクスチャが偏波チャネルによって異なる度合いが大きいことを示唆している.また,多偏波航空機レーダにより,実際に北海道苫小牧の管理森林における撮像実験(X/Lバンド)を昨年の2,8,11月に行った結果,森林への浸透性が強く,散乱機構が複雑なLバンドの方が,テクスチャの偏波依存性が高いという,上記のモデルに沿った結果が得られた. このほか,Cの『テクスチャとスペックルの関係』に関し,テクスチャ保存型のスペックル低減手法を開発した.これは,前処理としてターゲット分解を用いることで,点目標の保存性能を高めたものである.
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