2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代化遺産の視覚的・構造的形態変化が歴史性認識に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
15760387
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
深堀 清隆 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (70292646)
|
Keywords | 近代化土木遺産 / 歴史性認識 |
Research Abstract |
初年度である今年度においては、近代化土木遺産の歴史性を規定している要因の抽出を行った。この作業は土木学会等、土木遺産に関係する世界各国の諸団体が有する歴史的土木遺産の定義や価値評価基準の調査、さらには日本各地に存在する近代化土木遺産の調査を通じて行った。歴史認識は現存する構造物の形態要因と、その構造物に関わる史実や履歴といった情報要因の2つに大きく分類される。このうち形態要因に関しては、構造物の意匠(構造形式、材料、色彩)、汚れ・破損状況、自然的要素の付加、周辺景観、人為的改変(改修)などが分類され、一方情報要因には、建設年代・希少性、安全性、技術力、地元での愛着度(シンボル性)、機能の意義、有名な事件・人物等由来、地域性、建設の意図・経緯、特別な愛称などが挙げられた。続いてこれら形態要因と情報要因を組み合わせることで、ある歴史的遺産がどのような認識を喚起しているのかを説明する認識モデルを作成した。そしてこの認識モデルが有効に歴史認識を説明できているかをアンケート調査により検証した。ここでは24ケースの歴史的土木構造物を対象に、歴史的遺産として優れている特徴、劣っている特徴、保全・活用に対する意識、歴史性認識の度合いを回答してもらった。また同時にアンケートは情報要因の提供の度合いに応じて3種類実施し、人々が認識している情報要因に応じて、形態要因に対する認識や歴史性認識がどう影響されるかを検討した。さらにこれらの人々の認識と保全・活用に対する意向を関連付けることにより、歴史的土木構造物の有する属性別に望ましい保全・活用方策を示すことができた。
|