2004 Fiscal Year Annual Research Report
近代化遺産の視覚的・構造的形態変化が歴史性認識に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
15760387
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
深堀 清隆 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (70292646)
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Keywords | 土木遺産 / 近代化遺産 / 歴史的印象 |
Research Abstract |
本研究は歴史的な遺産としての近代化土木遺産が有する価値を、その遺産としての歴史的意義のみならず、現状の周辺環境や構造物の物理的状況や景観的状況に着目して評価し、そのような特性を活かした土木遺産の活用・保全のあり方を考えるものである。ここでは構造物の有する歴史的経緯というよりもむしろ、現地に残されている状況により着目し、それを人々がどのように歴史的なものとして感じ取るかを明らかにすることにポイントがある。2年目である本年度は、(1)人々が歴史的土木構造物を歴史的なものと認識する、その認識の形態にはどのようなものがあるのか。(2)構造物が置かれている現地の空間的状況や周辺環境はどのように評価すればよいのか、(3)(1)や(2)の観点から評価できる歴史的土木構造物については、その属性をより強調して活かす方策はあるのか、について研究を実施した。(1)の観点についてはまず構造物の空間的属性を、使用状況、構造物自体の属性、時間経過による状態変化、周辺整備の状況、土地との関係の5分類22項目として整理し、歴史的印象についてはインタビュー形式のアンケートを行い、空間的属性に対応した86種類の印象のバリエーションを抽出した。また(2)については埼玉県の煉瓦水門44基を歴史的土木遺産の事例として採り上げ、現地調査を通じて周辺環境や空間・景観的状況の整理を行った。構造物自体と周辺環境を評価する基準としてオリジナリティ、観賞価値、アクセシビリティに分類される評価要因および空間構成パターンを定義した。またこれらの評価システムによって44基の水門を実際に評価した。さらに(1)および(2)の成果から導かれる歴史的土木構造物の独特な歴史的印象や、評価の固有性を踏まえ、状況に応じた景観保全方針や整備手法のあり方について検討を行った。
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