Research Abstract |
本年度は,都市計画,都市経済学,都市地理学,都市社会学,人口学などの代表的テキストや論文などから,都市の人工社会モデルの構築に有用な概念を抽出した。分析に際し、特にエージェントとなるエンティティ,行為,イベント,それらの関係,所有権などの制度概念,結果として生じる現象・問題などを,時間階層を意識しつつ抽出した。 その結果を踏まえ,特に都市構造に大きな影響を与えると考えられる都市の経済原理に着目し,時間発展する簡単な1次元都市モデルを構築した。エージェントは,地代を決定する土地所有エージェントと,家計,事務所,製造業者からなる土地需要エージェントである。土地所有エージェントは,各期ごとに土地の効用に基づき土地の賃貸価格を決定し提示する。土地需要エージェントは,CBDまでの距離と他のエージェントの立地で変化する正/負の外部性から計算される各土地の効用を比較し,地代が支払い可能な範囲内で最も効用の高い土地に立地するものとする。3次元のルールテーブルで表現される土地供給エージェントの価格決定ルールを,都市に立地可能な土地需要エージェントの数,土地供給エージェントの地代収入,土地需要エージェントの効用の,計3つの評価軸により,多目的遺伝的アルゴリズムを用いて進化させた。その結果,不確実性を有した都市発展過程において,各主体の効用を増加させることができる地代決定ルールが,進化的に獲得された。 上記の研究成果は,雑誌論文1で発表予定のほか,日本建築学会計画系論文集に投稿予定である。
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