2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15760474
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
河原 利江 山口大学, 工学部, 助手 (80346577)
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Keywords | 煉瓦造建築物 / 保存 / 補修 / シミュレーション / 圧縮挙動 / 吸水率 / 漆喰 / 石灰セメントモルタル |
Research Abstract |
文化財煉瓦建築物の基本的な補修方法を検討するため以下の調査および実験を実施した。 1.オリジナルの煉瓦および組積体の力学的性質および吸水率に関する調査 補修対象となる歴史的な煉瓦造建築物の現地調査の上、周辺から採取することのできる煉瓦単体および組積体を選定し、圧縮試験を行なった。試験体は採取したサンプルから底辺×高さの比が1:2となるようにダイヤモンドカッターで切断したものにひずみゲージ、変位計を取り付け、一軸ひずみおよび二軸ひずみを測定した。その結果、一軸ひずみが5000μを超えるほどの大きな粘り強さを持ち、優れたエネルギー吸収能力を持つことが明らかになった。煉瓦単体においては吸水試験を実施し、煉瓦の種類(製造年代,成形方法)などによってその吸水率は大きく異なることが確認された。以上の試験を現在市販されている煉瓦においても実施したところ、水量比や焼成温度によって、圧縮挙動、吸水率は大きく異なり、中には明治期の歴史的な煉瓦よりも品質として劣るものもあるということが確認された。つまり、補修方法を検討するためのシミュレーション用の試験体は現代製造の煉瓦によって十分再現できるものと考えられる。 2.補修対象煉瓦造建築物における躯体の現状調査 煉瓦造建築物において躯体にどの程度の損傷が生じ、さらに内・外装材の種類を詳細に調査し、シミュレーション用の試験体の作成における情報の収集を行った。躯体においては、目地部のひび割れおよび空洞化が主な欠陥として上げられ、さらに調査時点で既に施工されて十数年経過した注入補修材料および塗布材料の劣化も確認された。内装は主に漆喰塗り、外装は主に石灰セメントモルタル塗り仕上げであり、それぞれの塗り仕上げの下塗り・中塗り・上塗りの調合の決定が必要である。 3.シミュレーション試験体の仮作成 以上の煉瓦の吸水率や圧縮強度をもとに目地の調合をセメント:石灰:砂の比が1:3:12とし、シミュレーション試験体を作成した。試験体の種類は、注入補修材料の検討に使用する目地部に空洞を設けた試験体、内装材・外装材の含浸補強および注入接着を想定した試験体、目地部表面に塗布されている現状の補修材料、および新たな補修材料を施した、煉瓦躯体の透水性能を評価する試験体の3種類である。今年度はこれらの試験体において各補修材料の予備的な検討を行うことができた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 馬場明生, 千 歩修, 河原利江, 守 明子, 高橋和雄: "メーソンリーユニットの力学的試験方法の改善および圧縮性状に関する実験的研究"日本建築学会構造系論文集. NO.571. 15-21 (2003)
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[Publications] 山口理人, 守 明子, 馬場明生, 河原利江: "文化財煉瓦造建築物の長期保存判定基準に関する研究 その1 焼成履歴判定試験方法の開発"日本建築学会学術講演梗概集. A-1 材料施工. 141-142 (2003)
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[Publications] 河原利江, 馬場明生, 守 明子, 長谷川直司, 高村功一: "文化財煉瓦建築物の長期保存判定基準に関する研究 その2 煉瓦および組積体の圧縮性状"日本建築学会学術講演梗概集. A-1 材料施工. 143-144 (2003)
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[Publications] 堀江真一, 馬場明生, 守 明子, 長谷川直司, 河原利江: "文化財煉瓦建築物の長期保存判定基準に関する研究 その3 目地非充填部注入による組積体の力学性状の評価試験方法の確立のための実験"日本建築学会学術講演梗概集. A-1 材料施工. 145-146 (2003)
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[Publications] 森本美貴子, 馬場明生, 守 明子, 渡部嗣道, 河原利江, 川手洋, 森田和宏: "文化財煉瓦建築物の長期保存判定基準に関する研究 その4 石灰セメントモルタルの煉瓦躯体に対する追従性評価手法の提案"日本建築学会学術講演梗概集. A-1 材料施工. 147-148 (2003)
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[Publications] 森田和宏, 馬場明生, 守 明子, 渡部詞道, 河原利江, 川手洋: "文化財煉瓦建築物の長期保存判定基準に関する研究 その5 漆喰の煉瓦躯体に対する追従性評価手法の提案"日本建築学会学術講演梗概集. A-1 材料施工. 149-150 (2003)