2004 Fiscal Year Annual Research Report
古代エジプト建築における組積造の技術と発展に関する研究
Project/Area Number |
15760481
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柏木 裕之 早稲田大学, エジプト学研究所, 講師 (60277762)
|
Keywords | 古代エジプト / 組積造 / アブシール / ダハシュール / 階段ピラミッド / 古王国時代 |
Research Abstract |
今年度は、アブ・シール南丘陵遺跡から出土したラメセス2世時代の石造建造物と古王国時代初期の石積み遺構の二基の組積造建築について、建築技術の考察を試みた。 前者については、柱、屋根、壁の建造方法を復元的に描くことができた。屋根の研究では、防排水技術を取り上げ、入念な手法を描いた。また柱については、柱礎石上面に刻まれたガイドラインを用いて各段の中心を求める手法が採られたことを指摘した。従来、大規模な傾斜路を用意して石材を積み上げる方法が知られていたが、こうした方法とは異なる、より簡易な方法の存在を挙げることができた。壁については、散乱した石材や基礎石に残された痕跡から凹凸を繰り返す特異な平面を復元すると共に、その建造方法を考察することによって、壁の転びを求めることができた。複雑な形を実現するために、石材の設置には試行錯誤と工夫の跡が認められ、建築活動を効率よく推し進めようとする、合理的な考え方が見受けられた。こうした思考は、活発な建築活動を可能としたラメセス2世時代に通底する特質であり、その一端を具体的な形で明示できたと考える。 後者の石積み遺構に関しては、これが日干しレンガから石材に移り変わる時期にあたり、古代エジプトの石造建造物の発生を解く重要な遺構であることが明瞭となった。この建造物の復元研究を通じて、内部の石積み技術の詳細を得るとともに、昨年度末にはエジプト各地に残る同時代の小型階段ピラミッドを比較調査した。今年度はこの結果を踏まえ、この時代の特徴である、内部の傾斜積み技法の変遷を整理した。 なお、これらの成果は、日本オリエント学会、日本建築学会などの論文集に投稿した。
|
Research Products
(1 results)