2003 Fiscal Year Annual Research Report
水酸アパタイトの構造欠陥の紫外ラマン散乱による高温その場観察
Project/Area Number |
15760502
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤森 宏高 山口大学, 大学院・医学研究科, 助手 (00301309)
|
Keywords | アパタイト / ラマン散乱 / 高温 / 水酸基 / 欠陥 |
Research Abstract |
生体材料、電子材料など様々な分野で応用が期待されている水酸アパタイトhydroxyapatite Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2の分解反応、イオン伝導率などの物理化学的性質は、その結晶構造、特にOHイオンと密接に関連している。そこで、高温下におけるOHイオンの正確な定量法を確立することが、アパタイトの基礎科学のみならず実用上重要であるが、高温でのアパタイトの構造変化に関する研究は、1972年にSeuterが一度報告したのみである。これらの材料を研究するために一般的に用いられてきた粉末X線回折では、OHイオンの情報を十分に得にくい。そこで申請者はOHイオンに比較的敏感なラマン散乱により、高温での構造変化の観察を行った。ラマン散乱では通常、緑や青の可視レーザーを用いているために熱輻射の影響が大きく、ラマン散乱可能な温度領域が制限されていることが問題である。本申請課題では紫外レーザーを用いた高温ラマン散乱装置を用いて、熱輻射の影響を軽減し、超高温領域におけるその場で水酸アパタイト中のOHイオンを感度良く観察(実況中継)を行った。今年度の実施内容は、まず精密分析に充分耐えられる均一な試料を合成し、紫外ラマン散乱による超高温領域でのその場観察により、X線回折だけでは測定不可能なOHに由来する構造変化を観測した。その結果、800℃以上の温度でOH量が急激に減少し、冷却時にはヒステリシスを示すことが明らかとなった。来年度は、一定温度下でのOH量の時間依存性を調べると共に、粉末X線回折のリートベルト解析、熱分析も併用しながら、水酸アパタイトの構造欠陥の全容を明らかにする予定である。
|