2003 Fiscal Year Annual Research Report
粒界ナノ量子構造制御による新機能セラミックス開発プロセスの創出
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15760518
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 英弘 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (80313021)
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Keywords | セラミック / 結晶粒界 / 電子構造 / 第一原理計算 / 拡散 / 透過型電子顕微鏡 / プロセシング / 化学結合状態 |
Research Abstract |
本研究ではα-Al_2O_3多結晶体について、粒界ナノ領域における原子構造や化学結合状態を制御することにより、結晶粒内の高強度・耐食性といった特長を維持しつつ、多結晶体に新たな特性を付与するという新しい材料開発を目的としている。今年度は0.1mol%の2〜4価陽イオンを添加したAl_2O_3を主な研究対象とし、研究機関の共通設備として現有の高分解能透過型電子顕微鏡及び電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光や電子エネルギー損失分光を用い、入射電子ビームをΦ1nmに絞り込んで、結晶粒界に偏析するAl_2O_3多結晶体における粒界構造や化学結合状態、微量添加元素の偏析箇所や濃度についての局所分析を行った。一方、高速コンピュータを用いた第一原理に基づく分子軌道計算によって、粒界での原子間結合力を定量的に評価した。また、高温力学特性や耐食性等、様々な現象の支配的因子となるAl_2O_3の粒界物質輸送現象について、本研究では焼結プロセスの緻密化挙動に注目し、高温大気炉とレーザー変位計を用いた緻密化過程のIn-situ観察を行うことにより評価した。その結果、粒界拡散係数は.Al_2O_3結晶内のイオン性と相関関係があり、特に酸素イオンのイオン価数との関連性が認められた。即ち、添加原子と酸素イオンとの原子間相互作用に伴う電子分布の分極により、酸素イオンのイオン性が増す場合、粒界における輸送現象は抑制される方向に働く。このことから、ナトリウムランプ発光管としての実用化において要求されているAl_2O_3の耐熱性や耐食性の向上のためには、陽イオン・陰イオンの分極化を促す様なドーパントが有効であることが予想される。これらの成果は各学術誌及び国際会議において発表若しくは発表予定であり、また成果の一部は2003年10月に開催された「第4回クリープ及びクリープ疲労に関する国際会議(4^<TH> Conference on Creep, Fatigue and Creep-fatigue Interaction)」において、"Grain Boundary Chemistry and High-temperature Plastic Flow in Polycrystalline Alumina"と題した招待講演の中で紹介し国際的にも高い評価を得た。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Yoshida.K.Yokoyama, N.Shibata, Y.Ikuhara, T.Sakuma: "High-temperature Grain Boundary Sliding Behavior and Grain Boundary Energy in Cubic Zirconia Birystals"Acta Mater.. 印刷中. (2004)
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[Publications] H.Yoshida, Y.Ikuhara, T.Sakuma, M.Sakurai, E.Matsubara: "XAFS Study on the Fine Structure of Lutetium Segregated at Grain Boundaries in Fine-grained, Polycrystalline Alumina"Phil.Mag.. 印刷中. (2004)
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[Publications] K.Nakatani, H.Nagayama, H.Yoshida, T.Yamamoto, T.Sakuma: "The Effect of Grain Boundary Segregation on Superplastic Behavior in Cation-Doped 3Y-TZP"Scripta Mater.. 49. 791-795 (2003)
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[Publications] H.Yoshida, Y.Ikuhara, T.Sakuma: "Small Dopant Effect on High Temperature Plasticity and Grain Boundary Quantum Structure in Oxide Ceramics"Research Advances in Ceramics. 1. 11-23 (2003)
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[Publications] H.Yoshida, T.Yamamoto, T.Sakuma: "Lutetium-doping Effect on the Grain Boundary Diffusional Creep in Polycrystalline Al_2O_3"J.Euro.Ceram.Soc.. 23. 1795-1801 (2003)
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[Publications] 吉田英弘: "粒界量子構造制御による高温セラミック材料の開発"機能材料. 23. 35-42 (2003)