2003 Fiscal Year Annual Research Report
ナノビームを用いたEBSP測定による析出物周囲に形成された変形組織の局所方位解析
Project/Area Number |
15760522
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 大樹 京都大学, 工学研究科, 助手 (00335192)
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Keywords | アルミニウム合金 / 熱間押出 / 結晶粒微細化 / 動的再結晶 / EBSP |
Research Abstract |
アルミニウム合金の加工法として熱間押出しは重要であるにもかかわらず、押出し加工中の組織変化については十分に調べられていない。その理由の一つとして従来の走査型電子顕微鏡では電子ビーム径が大きく、加工組織中の局所的な方位を調べることが出来なかったことがあげられるが、本研究では、ナノ電子ビームを照射可能な高分解能走査型顕微鏡を用いることにより、アルミニウム合金の加工組織について詳細に調べることに成功した。特に、アルミニウム合金と、母相中に析出物が存在するアルミニウム合金の熱間押出し加工に伴う組織変化の違いを調べることにより、微細組織を微細化し、機械的性質を向上させるための知見を得た。 すなわち、アルミニウム合金で最も高強度なAl-Zn-Mg合金を熱間押出しすると、押出し初期に粒界付近で粒界すべりが生じ、粒界付近の歪み量が増加するため、局所的に歪誘起粒界移動が起こることによる粒界の凹凸化が観察された。さらに押出し加工が進むことにより、この凹凸化した粒界に粒界せん断応力が付加され、局所的な結晶回転が生じ、初期粒界上の一部に微細結晶粒が形成されることが分かった。この現象は動的再結晶現象であり、アルミニウム合金では高温加工中に動的回復が極めて容易に起こることから、生じにくいとされていた動的再結晶がAl-Zn-Mg合金に熱間押出し加工を施すと、発現することが今回の研究により発見された。 また、アルミニウム合金の動的回復を抑制し、母相内の転位密度をさらに増加させることにより、動的再結晶を促進させる目的で、ナノメートルサイズのAl_3Zr析出相を母相内に分散させた。その結果、熱間押出し中の動的再結晶が促進され、微細粒が占める割合が増加し、強度が50MPa増加した。
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