2003 Fiscal Year Annual Research Report
結晶粒微細化誘起による相変態を利用したナノデュプレックス組織制御
Project/Area Number |
15760530
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
藤原 弘 高知工科大学, 工学部, 助手 (80320117)
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Keywords | 結晶粒微細化 / 相変態 / 超強加工 / ナノデュプレックス |
Research Abstract |
プラズマ回転電極法により作製したSUS316Lオーステナイト系ステンレス鋼粉末に対して、ボールミル装置を用いたメカニカルミリング法により超強加工を施すと、ステンレス鋼粉末表面にナノ結晶粒組織を有する表面改質層と粉末内部に超微細2相組織構造であるナノデュプレックス構造が生成していることが確認された。表面改質層におけるナノ結晶粒組織は、結晶粒径約20nm程度のフェライト(BCC)粒で構成されていた。粉末内部の強加工領域では、結晶粒径は約100nm程度であり、オーステナイト(FCC)+フェライト(BCC)のナノデュプレックス組織構造であった。SUS316Lステンレス鋼は本来オーステナイト構造を有するが、本研究のような通常では行われないほどの超強加工を施すとフェライト相が生成する。このようなオーステナイト微細組織中に新たに生成するフェライト構造は、超強加工による結晶粒微細化に伴う相変態によって生成したものと考えられる。オーステナイトからフェライトが生成するには、1000J/mol程度の駆動力が必要であると報告されているが、結晶粒径が20nm程度になると約1000J/molの粒界エネルギーが得られる。また、オーステナイトは本来室温で準安定であるとされているため、超強加工によって多数導入された剪断帯などにより非常に過剰な原子空孔が導入されることにより、結晶構造が本来室温で安定なBCC構造に変態する。 これらの研究内容は、2003年11月11〜13日に、オーストラリアで開催された2nd International Symposium on Ultrafine Grained Structureにおいて、「(Ferrite + Austenite) Nano-Duplex Structure Formation in an SUS316L Austenitic Stainless Steel Powder」というタイトルにて発表を行った。
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