2004 Fiscal Year Annual Research Report
結晶粒微細化誘起による相変態を利用したナノデュプレックス組織制御
Project/Area Number |
15760530
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
藤原 弘 高知工科大学, 工学部, 助手 (80320117)
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Keywords | 結晶粒微細化 / 相変態 / 強ひずみ加工 / ナノデュプレックス |
Research Abstract |
強ひずみ加工粉末は表面付近が最も強ひずみ加工を受ける領域であり、内部になるほど徐々に加工度が軽減されていく。表面に近い領域では結晶粒径20nm程度の等軸ナノ結晶粒組織が観察される。この領域では、等軸ナノ結晶粒組織は大角粒界を持っておりBCC構造である。さらに、加工度がやや小さな内部側の領域では、幅20〜50nm程度で長さ数百nmのアスペクト比の大きい層状ナノ結晶粒(ナノレイヤー)組織が形成されている。ナノレイヤー組織部はBCC構造とFCC構造とが混在した組織である。すなわち、表面領域ではBCCのフェライト(α)単相組織、内部領域ではαとFCC構造のオーステナイト(γ)の2相組織が形成されている。このようなα粒は、γ粒がナノ結晶粒化することで増大した粒界エネルギーを駆動力として変態した可能性がある。一方、ナノレイヤー組織に近接したγ粒からのα変態以外のα相の生成も起こり、(α+γ)ナノデュプレックス組織を形成している。このようなα粒は上述の等軸ナノα粒よりも粒径が大きい。これは、γ界面エネルギーの上昇に加えて、著しい強加工により原子空孔などの多量の格子欠陥が導入され母相γの化学的自由エネルギーが増大した結果、より大きなγ粒径であってもα変態の駆動力が得られたものと推測される。 SUS316Lステンレス鋼では、常温でMMによる強ひずみ加工を行うとナノレイヤー組織を経て等軸ナノ結晶粒組織、あるいは(α+γ)ナノデュプレックス組織を形成する。このとき、2種類のα変態が観察されるが、一つはナノ結晶化による界面エネルギー上昇に起因する変態であり、もう一つは界面エネルギー上昇と同時に母相の化学的自由エネルギー上昇に起因した変態であると考えられる。いずれも常温近傍で起こった変態であり、これまでのマルテンサイト変態とは異なる生成メカニズムによる、マッシブ的な相変態によるものと推測される。
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Research Products
(3 results)