2003 Fiscal Year Annual Research Report
超短パルス紫外レーザ用ガラスファイバの開発に関する基礎的研究
Project/Area Number |
15760551
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村田 貴広 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 助手 (70304839)
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Keywords | マトリクス効果 / 酸化物ガラス / フッ化物ガラス / Ce(III) / redox / 塩基度 / site selectivity / 励起状態吸収 |
Research Abstract |
本研究では超短パルス紫外光レーザ材料としてCe^<3+>ドープガラスの開発・実用化を目標とした基礎研究を行っている.本年度では,ドープしたCe^<3+>が高い蛍光強度を示すマトリクスガラスの組成探索を行った. マトリクスガラスとしては紫外域の透過率が比較的良好なケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩系およびフッ化アルミニウム系ガラスを選択した.系統的に組成を変化させた酸化物およびフッ化物系ガラスに0.1mol%CeF_3をドープし,吸収および蛍光スペクトルを測定した. 酸化物ガラスにドープしたCeイオンはCe^<3+>-Ce^<4+>のredox反応が生じる.そのためドープしたCe3+の蛍光強度はこのredox反応の影響を受ける.そこで,酸化物ガラスの塩基度を組成から求めることが可能な研究者独自の組成パラメータB値によりCe^<3+>-Ce^<4+>のredoxの組成依存性を考察した.ケイ酸塩,ホウ酸塩系ガラスにドープしたCe^<3+>の蛍光強度はB値の低下に伴い増大した.B値の減少に伴い低原子価のCe^<3+>が存在割合が増大することからCe^<3+>-Ce^<4+>のredoxがO型の式に従うことが理解できる.一方,リン酸塩系ガラスにドープしたCe^<3+>の蛍光強度はB値に依存せず高い値で一定値を示した.これはリン酸塩系ガラス特有のP=OサイトにCe^<3+>が選択的に配位し,3価で安定化されるためであることを明らかにした. フッ化物ガラスにおけるCeイオンは本質的にフッ化物融体と気相間でフッ素の出入りがないのでredoxの影響を受けない.従って,フッ化物ガラスにドープしたCe^<3+>の紫外蛍光強度の組成依存性については,励起状態にあるCe^<3+>の電子がマトリクスガラスの伝導体へ吸収される励起状態吸収の影響について考察を加えた.フッ化物ガラスにドープしたCe^<3+>の紫外蛍光強度はCe^<3+>の励起準位とマトリクスガラスの吸収端の間のエネルギーギャップが大きくなるに従い増大し,マトリクスガラスの吸収端波長が最も短波長側に位置するBaF_2-CaF_2-AlF_3-YF_3系ガラス試料において最も高いCe^<3+>の紫外蛍光を示した. 以上のように系統的な基礎研究によって,Ce^<3+>のみを生成させることが可能な最適マトリクスガラスとして酸化物系ではリン酸塩ガラス,フッ化物系ではBaF_2-CaF_2-AlF_3-YF_3ガラスであることを見出した.これらの成果については「ガラスおよびフォトニクス材料討論会」にて発表済みであり,2004年4月に国際会議で2件発表し,論文を2報投稿する.次年度では,最適化したマトリクスガラスを中心としてドープしたCe^<3+>の励起光による劣化機構を解明する.
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