2003 Fiscal Year Annual Research Report
高度なタンパク質安定化作用と物理的安定性を兼備した新規糖類アモルファス構造の創製
Project/Area Number |
15760558
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今村 維克 岡山大学, 工学部, 助教授 (70294436)
|
Keywords | 糖類アモルファス構造 / 複合マトリクス / タンパク質安定化 / 物理的安定性 / ガラス転移 / デキストラン / スクロース / 凍結乾燥 |
Research Abstract |
不安定なタンパク質を安定化する手法の一つとして、タンパク質を糖などの安定化剤とともに凍結乾燥することでタンパク質を糖のアモルファスマトリクスに包埋し、保存中の変性、失活を低減する手法がある。このタンパク質安定化剤としてはスクロースなどの低分子量の糖は高い安定化作用を有するものの、吸湿や熱により容易にコラプスするという欠点がある.一方,デキストランなどの多糖類は安定化作用は極めて低いものの,物理的安定性に優れている。従って,高い安定化作用を有する少糖と高い物理的安定性を有する多糖を組み合わせることで,高度な安定化作用と物理的安定性を併せ持つ新規な糖類アモルファスマトリクスを構築出来る可能性がある.この新規な安定化剤である少糖-多糖複合アモルファスの物理的安定性(ガラス転移温度,Tg)およびタンパク質安定化作用について検討した。少糖としてsucrose, erythritol,多糖として分子量の異なる2種類のdextran (MW1500,6000),タンパク質としてlactate dehydrogenase(LDH)を用いた.これらの少糖・多糖を様々な割合(0〜100%)で含む凍結乾燥試料を作成し,凍結乾燥直後のLDHの相対残存活性,一定相対湿度下で平衡化したときのTgを測定した.その結果,sucrose-dextran, erythritol-dextran試料のTgはいずれの相対湿度においてもdextran含有率が40%以上で顕著に上昇することが分かった。一方,凍結乾燥直後の残存酵素活性は,sucrose, erythritol単体の場合はいずれも50%であったのに対し,sucrose-dextran試料では最大70%,erythritol-dextran試料では最大95%となった.これらのことより少糖-多糖複合アモルファスマトリクスの極めて高い有効性が明らかとなった.
|