2003 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界二酸化炭素の溶媒特性を利用した光不斉反応の制御研究
Project/Area Number |
15760572
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
齋藤 良太 成蹊大学, 工学部, 助手 (90327974)
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / 不斉光増感反応 / シクロオクテン / ベンゼンテトラカルボン酸エステル / フッ素 |
Research Abstract |
新規な光学活性光増感剤として、テトラ[(S)-(-)-1,1,1-トリフルオロ-2-オクチル]ベンゼンテトラカルボン酸エステル(1)を合成した。化合物の同定は、^1H-NMR分光法,FT-IR分光法,及び元素分析により行った。合成した(1)の比旋光度は-78.94゜(c=0.52,シクロヘキサン中)であった。ここで1の^1H-NMRスペクトルにおいて、ベンゼン環上のプロトンが8.07ppmに観測され、対応するテトラ[(R)-(-)-2-オクチル]ベンゼンテトラカルボン酸エステル(2)の芳香族プロトン(7.95ppm)よりも若干低磁場側で観測された。このことから、フッ素原子の導入が光増感剤のπ-共役系に電子的な影響を及ぼしていることがわかった。合成した(1)のシクロヘキサン中における紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、0-0遷移が293nmに観測されモル吸光係数は2900dm^3・mol^<-1>・cm^<-1>であった。この値は対応する(-)-テトラボルニルベンゼンテトラカルボン酸エステルのものと同等であり、このことから原子半径の大きなフッ素を導入することによってアルコール部位のかさ高さが幾分増大していることが示唆された。合成した(1)のシクロヘキサン中における蛍光スペクトルを測定したところ、蛍光極大が336nmに観測され、これまで報告されたベンゼンテトラカルボン酸エステル類(331〜332nm)よりも若干長波長シフトした。次に、合成した(1)を光増感剤に用いた超臨界二酸化炭素中におけるZ-シクロオクテンの不斉光増感異性化反応について、反応温度45℃,反応圧力7.7〜10.1MPaで行った。その結果、光異性化生成物(R)-及び(S)-E-シクロオクテンが得られ、その鏡像体過剰率は11.6〜13.6%となり、圧力が増大するにつれて向上することがわかった。
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