2005 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界二酸化炭素の溶媒特性を利用した光不斉反応の制御研究
Project/Area Number |
15760572
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
齋藤 良太 東京農工大学, 大学院・工学研究部, 特任助手 (90327974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 佳久 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30112543)
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / 光不斉反応 / エントロピー / 圧力効果 |
Research Abstract |
研究実施計画に基づき、これまでに検討例のない新しい光触媒として、テトラキス(ジイソプロピリデン-D-グルコシル)4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタレート及びテトラキス-(-)-(1S-1-トリフルオロメチルヘプチル)4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタレートを合成し、これらを用いて超臨界二酸化炭素中(scCO_2)におけるシクロオクテンの光増感エナンチオ区別異性化反応の生成物鏡像体過剰率(ee)に対する圧力効果を検討した。その結果、これらの系においても臨界点近傍におけるeeの急激な変化が観測され、この現象がscCO_2中における光不斉反応では一般的であることがわかった。さらにテトラキス(ジイソプロピリデン-D-グルコシル)体を用いた系では生成物キラリティーの反転が観測され、糖誘導体を不斉補助基に有する光触媒を用いた場合はこのようなキラリティーの反転現象が起こりやすいということも明らかとなった。 このようにscCO_2中における光不斉反応の研究を通して、「エントロピー」がキラリティー決定の段階で大変重要な役割を果たしていることを明らかにした。本年度はさらに、このエントロピー制御の概念が熱的不斉反応にも拡張可能かどうか明らかにする目的で、キラルな人工NADHモデルを数種合成し、それらを用いた活性カルボニル化合物の不斉還元反応に及ぼす温度効果について検討した。その結果、還元反応生成物のeeが温度上昇に伴い向上し、さらには生成物キラリティーが反転するという興味深い挙動が観測された。これらの反応の活性化パラメーターを求めたところ、いずれの場合においても活性化エントロピー差が0ではなく、不斉光反応において求められた値と同等に大きい値であることがわかった。 これらの結果から、scCO_2中における光不斉反応のみならず、バイオミメティックな不斉還元反応系においてもエントロピーが生成物キラリティーを決定する上で重要な役割を果たしていることが明らかとなり、「エントロピーによるキラリティー制御」の概念は光反応にとどまらず熱反応にも適用可能な普遍的な概念であることを実証した。
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Research Products
(1 results)