Research Abstract |
本年度は,まずこれまでの成果を踏まえた上で,特に窒素分子の回転・振動緩和,および解離の連成過程を明らかにし,CFDに用いることのできる計算負荷のちいさい数理モデルを開発するために,分子動力学計算の精度の向上と,計算データの統計的処理,および数理モデル化を集中的に行った.具体的には(1)窒素分子-窒素分子間の分子間ポテンシャルモデルの精度を向上させるために,最新の文献が提供するモデルをテストし,その影響を観察した.結果的には分子間ポテンシャルの影響は高温(>2500K)では顕著でなく,従来の分子間ポテンシャルモデルを用いても(計算負荷が低減できるため)十分精度のよい計算が行われることが確認された.次に(2)上記の検証されたポテンシャルを用いて,系統的な一連の計算を行った.温度範囲で1,000Kから80,000Kまで,回転準位について10間隔で計算を行い,統計的な誤差を低減するために,各ケースについて平均して30,000ケースの軌道計算をおこなった.次に(3)上記のデータを統計的に処理し,回転準位間の遷移レートモデルを半経験的な経験式で提案した.最後に,上記QCT解析モデルをDSMCコードに組み込んで,分子衝突シミュレータを開発し,衝撃波背後の緩和過程の直接計算を行うことで,各温度,各非平衡状態における回転緩和の衝突数と振動緩和の特性時間を計算し,これを従来のモデルを修正する形で,新しいモデルを提案した.この結果によると,回転緩和の衝突数は,低温(T<1500K)で実験的に検証されたものとよく一致し,また高温でも従来の解析的に得られた回転衝突数と同様の傾向を定性的に示すものの,その絶対値はおよそ1/2程度であり,一部で議論されているような,高音域での回転緩和の遅れは認められなかった.また振動緩和については,従来Parkにより提案されている振動緩和の制限衝突断面積は温度依存性が弱く,振動緩和時間は回転緩和時間に漸近し,衝突断面積は高温で温度にほとんど依存しなくなることがわかった.以上の成果を振動・回転・解離連成モデルとしてまとめた.
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