Research Abstract |
本年度は特に実験による高エンタルピ気流の計測技術の向上を目指し,実験的な面からは光学計測技術の向上を,解析的な面からは輻射解析気コードの改善を図った.非平衡現象を実験的に計測するためには,局所平衡状態すなわち実験的な検証が比較的容易な対象を用いて計測・解析技術を向上させ精度を検証しておく必要がある.そこで比較的高密度プラズマの生成が可能な誘導加熱風洞を利用し,局所平衡プラズマを生成して分光実験を行った.対象プラズマは近似的に軸対称プラズマとして取り扱えるが,観測される発光は視線方向に積分されたものであるため,Abel逆変換により半径方向の実際の分布に置き換える必要がある.これを実現するためには,観測される発光の半径方向分布を取得する必要がある.ところが放電の非定常性および誘導加熱装置の熱的な経時変化によりプラズマ状態は変化するため,半径方向分布は同時に取得されることが精度の向上が期待できる.これを実現するために,半径方向の発光イメージを分光器のスリットに投影し,イメージング分光器を用いて発光スペクトルの半径方向分布を同時に取得する計測技術を整備した.このようにして得られた半径方向の観測スペクトル分布を半径方向の放射係数スペクトルに変換し,輻射解析コードによりこれが再現できるかどうかの検証を行った.その結果,誘導加熱風洞に含まれる不純物の影響が放射スペクトルに与える影響が大きいこと,解析精度を向上する必要のあることが判明した.これを実現するために従来の輻射解析コードに多くの発光分子を追加し,解析精度を向上させる改善を行った.その結果,実験で得られるスペクトルを非常に良い精度で再現できることが確認され,スペクトルフィッティング法により気流に含まれる各化学種の密度(不純物を含む),分子の内部モードの温度(振動,回転温度),および気流エンタルピの予測が可能となった.なお,輻射解析コードの改善にあたっては,分子の内部モード準位や電子遷移モーメントを解析するための量子計算プログラムを開発した. 非平衡現象の解析技術向上・マクロモデル化に関しては,従来のQCT解析コードを改善することで,窒素分子に関わる回転,振動モードの緩和解析を継続して行い,これまで行われた実験結果で検証するとともに,実験では困難な高温域での解析を行い,低温から高温まで適用できるマクロモデルの開発を行った.また金星や火星の大気に関わる研究についても着手し,金星における極超音速飛行環境における非平衡現象についての解析技術の向上を図った.
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