Research Abstract |
本年度は3年間の研究の集大成として,これまでに培われた高エンタルピ気流の計測技術の応用をおこなった.具体的には,宇宙航空研究開発機構の総合技術研究本部のCIPプラズマ風洞の計測,同機構の宇宙科学研究本部のICPプラズマ風洞の計測を行って,気流診断を行った.計測精度を向上させるため,ここでは特に0原子への電子付着による発光,NO分子からの発光のモデル化の高精度化を行うことで,実験による観測されたスペクトルの再現性を大幅に向上するとともに,気流の回転温度,振動温度,電子励起温度を高精度で評価するとともに,気流中化学種のモル分率を評価した.これとは逆に,実験的に得られたスペクトルを用いて輻射解析コードの高精度化・汎用化を行った. 宇宙機周りの解析として,アブレーションモデルの高精度化を行った.ここでは実験で新たに得られた知見を元に,熱分解ガスとしてC2H2を含む熱化学系を提案し,評価モデルへの導入を行った.これを行うにあたり,既存の気相化学反応の反応レートをレビューして,新たな31化学反応系(金星・地球・火星大気に応用可能)モデルを構築するとともに,新しい非平衡反応モデルセットを構築して,特に金星大気への高速再突入問題について応用解析を行った.金星への高速突入では輻射によるエネルギー輸送-得に気体力学的過程との強いカップリング-が重要である.これを正確にモデル化するため,輻射解析コードを発展させて,輻射エネルギー輸送をCFDと連成して解く先進的な手法を開発した.その結果,従来の非連成手法で解析した機体の加熱率は大幅に過大評価であり,機体の効率よい設計のためには,新しく開発した連成手法が非常に精度よく,かつ効率的であることがわかった.これらの成果を取りまとめて国際学会にて発表し,また学術雑誌に投稿して受理された. 上記コードの開発,特に化学反応レートの算出に当たっては,実験的にいまだ精度よく算出できない過程が存在し,評価精度向上の支障となっている.そこで本研究では,例えばCO2の乖離速度係数,COの熱的緩和などに焦点を当てて,分子動力学的解析により算出を試みた.また輻射コードの改善においては,電子遷移モーメント,分子ポテンシャルなど基礎物性値を量子化学計算により算出し,これを用いた遷移速度係数を算出するなどの手法を用いている.これらサブテーマの成果は,結果を取りまとめ次第,逐次成果報告として発表する予定である.
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