2003 Fiscal Year Annual Research Report
線虫C.エレガンスにおける感覚情報に依存した体長の制御機構の分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
15770002
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤原 学 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (70359933)
|
Keywords | 体のサイズ / 感覚情報 / 脂肪 |
Research Abstract |
我々の研究グループはこれまでに、線虫C.エレガンスの体の大きさが感覚情報によって制御されていることを報告している。今年度は、その分子的メカニズムについて明らかにする目的で、このような体長の制御機構に異常を示すchb-3変異体の解析を行った。その結果、chb-3変異体の原因遺伝子がANKリピートとzf-MYNDモチーフを持つ新規タンパク質をコードすること、ハエからヒトにまで相同性の高い分子が保存されていること、その発現が感覚神経と腸のそれぞれ細胞質で見られること、を明らかにした。グアニル酸シクラーゼdaf-11の変異体と表現型が相似していることや二重変異体を用いた遺伝学的解析の結果から、我々はCHB-3分子がcGMPシグナリングのコンポーネントして、体のサイズの調節に関わっているのではないかと考えて、さらに解析を進めている。 さらに、この制御機構に関わる新たな変異体のスクリーニングを行って、すでに複数の株を得ている。このうちの一つについては表現型の解析とともに詳細なマッピングを進めており、遺伝子の同定を目指している。 また現在我々は、体のサイズとエネルギーの蓄積量,との相関についても興味を持ち解析を始めている。端緒的な知見として、感覚入力の欠損によって体のサイズが減少した線虫には、コントロールの線虫より多くの脂肪が蓄積していることを見いだした。これは、線虫が外界から適切な刺激を受けなかった場合、エネルギーを体の成長に消費せず体内への蓄積にまわすことを示唆し、生物の適応行動あるいは生体のホメオスタシスとして興味深い。代謝に関わる他の変異体、例えばインシュリン経路の変異体との関連を調べることで、この機構についても解析を始めている。
|