2003 Fiscal Year Annual Research Report
新しいタイプのゲノム不安定「一塩基不安定性」の原因遺伝子の解明
Project/Area Number |
15770004
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
大河内 江里子 国立がんセンター研究所, 発がん研究部, 室長 (50300942)
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Keywords | ゲノム不安定性 / 乳がん / ラット / 動物モデル / DMBA |
Research Abstract |
一塩基不安定性は、マイクロサテライト不安定性を伴わずに、点突然変異率が上昇するタイプのゲノム不安定性である。本研究では、ラットに誘発した乳がんから、一塩基不安定性をもつ腫瘍ともたない腫瘍とを分別し、cDNAマイクロアレイ解析により、その原因遺伝子を同定することを目的とした。実験動物に誘発した腫瘍を利用することにより、着目する形質(一塩基不安定性)以外の、遺伝的背景、発がん要因等がなるべく均一な腫瘍が利用できる利点がある。今年度は、材料となるラット乳がん細胞株を樹立した。 1.細胞株13系統の樹立 7週齢の雌(lacI-transgenic F344 Big Blue^<【○!R】> x SD)F_1ラット30匹に、7,12-dimethylbenz[a]anthracene (DMBA) 50mg/kgを1回強制胃内投与、25-32週目に屠殺した。16匹のラットに、合計23個の腫瘍が誘発された。組織学的にadenocarcinomaと病理診断された13個について細胞株の樹立を試み、最終的に13系統のラット細胞株の樹立に成功した。 2.樹立した細胞株の由来の確認 これら13系統の細胞株は、全てオイルレッドOによる中性脂肪染色に陽性であったことから、乳腺由来の細胞であることを確認した。 3.ヌードマウスでの造腫瘍能 6-8週齢の雌ヌードマウス(BALB/cAnNCrj-nu/nu系統)の両肩に、Phosphate-Buffered Salineに懸濁させた約1×10^7個の細胞を注射し、造腫瘍能の有無を解析した。検討した6系統のうち、1系統(#DMBA397)のみが造腫瘍能を示した。これらの結果は、一塩基不安定性陽性を示した2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine (PhIP)により誘発した乳がんとは対照的であり、何らかの生物学的な違いをもつ乳がんが得られたことが示唆された。
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