2003 Fiscal Year Annual Research Report
アリ植物と共生アリの共種分化関係における種特異性を維持する化学的機構の解明
Project/Area Number |
15770008
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
乾 陽子 大阪教育大学, 教育学部, 助手 (10343261)
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Keywords | 種特異性 / アリ植物 / 揮発性成分 / オオバギ属 / 奇主選好性 / 熱帯 / 共種分化 |
Research Abstract |
マレーシア国のサラワク州にあるランビルヒルズ国立公園内の熱帯雨林に赴き、現地に生育するオオバギ属(Macaranga)アリ植物の調査にあたった。国立公園内にてオオバギ属7種について共生するアリの創巣女王アリが未侵入の実生を野外で採集し、苗畑内にて栽培した。これらの実生を、創巣女王アリが侵入する段階にまで成長させたのち、化学成分のサンプリングに用いた。揮発性成分のサンプリングのために、吸着剤TENAXによるヘッドスペース法および有機溶媒抽出法を用いた。得られたサンプルは日本に持ち帰り、GC-MS分析に供した。その結果、溶媒抽出のサンプルから、テルペン類などの複数の揮発性成分が得られ、これらはオオバギ属の種によって異なることが分かった。現在これらの成分の同定と詳細な解析を進行中である。 また、アリ類が巣仲間認識に用いることが知られている体表炭化水素について調査するために、野外にて成長したアリのコロニーを擁する成木のオオバギから働き蟻を採集し、溶媒を用いて体表に存在する炭化水素の抽出を行った。現在これらの成分について化学分析を進行中である。 また、共生するアリ類は宿主であるオオバギの木の外敵に対して攻撃をすることで宿主を防衛するが、攻撃行動と動員を誘発する化学的シグナルの存在を確認するために、野外にて加害葉の葉辺を未加害の葉の上に置き、アリ類の行動観察を行った。この結果、宿主の種のオオバギの葉辺に対してより迅速で多数の動員が観察された。これは薬の加害部から放出される成分が種に特異的であることを示唆している。 一方、日本の木本植物で、葉の揮発性成分と昆虫群集構造の関係を調査する研究も併せて行い、植物の葉の揮発性成分が昆虫の入植プロセスに関わることで群集の形成に寄与していることを示唆した。オオバギにおいても、アリの入植に葉由来の化学的情報が深く関わっている可能性が高いことが考えられる。
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Research Products
(1 results)