2003 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態系における菌根および菌根菌の現存量とそれらの呼吸速度の推定
Project/Area Number |
15770015
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
藤吉 正明 東海大学, 教養学部, 講師 (70349322)
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Keywords | 菌根 / 菌根菌 / 呼吸速度 / 土壌炭素フロー / 物質循環 / バイオマス / 富士山 / 森林生態系 |
Research Abstract |
森林生態系の土壌炭素フローに対する菌根および菌根菌の影響を明らかにするために、森林において四季を通した菌根および菌根菌の呼吸速度の推定を行った。 調査地は、富士山の亜高山帯針葉樹林(シラビソ林)に設けた。菌根と菌根菌の呼吸速度は、土壌中に塩ビ管を埋設することによって物理的に菌根と菌根菌の侵入を遮断した塩ビ管区、菌根菌のみ侵入できるネット区、および根切り処理を行い新たな菌根と菌根菌の侵入がおこる根切り区(3処理区各8反復)を設け、2ヶ月おきに3処理区の土壌呼吸を測定し、区画毎の土壌呼吸量の差し引きにより菌根と菌根菌の呼吸量を推定した。 四季を通した土壌呼吸速度の変化は、各処理区とも同じ傾向を示し、5月から8月にかけて増加した後、9と11月は減少する傾向であった。ネット区と根切り区の土壌呼吸速度は、四季を通してほぼ同じ値で有意な差はなかった。一方、塩ビ管区は、それらの2処理区よりも有意に低い値であった。本年度は、ネット区と根切り区の間で土壌呼吸速度の差が見られなかったので、菌根の呼吸量の推定を行うことはできなかった。しかしながら、塩ビ管区と根切り区の間では有意な差が生じたため、根切り区の値から塩ビ管区の値を差し引いて菌根菌の呼吸量を推定すると、5月と11月は約1molCO^2 m^<-2> s^<-1>、8月と9月は約2.5molCO_2 m^<-2> s^<-1>であった。8月において菌根菌の呼吸量は、全土壌呼吸量の約4割を占めることが明らかになった。来年度は、土壌攪乱による影響が少なくなると思われるため、菌根の呼吸量の推定も可能であると考えられる。また、菌類バイオマスの定量によって土壌呼吸速度の高かったネット区に多くの菌根菌が存在していたかどうかの裏付も行い、菌根と菌根菌の呼吸量推定の精度を高める予定である。
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