2005 Fiscal Year Annual Research Report
個体間の協力的な関係の形成・維持メカニズム-パニッシュメントは協力を引き出すか-
Project/Area Number |
15770016
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
岡本 暁子 東海学園大学, 人文学部, 講師 (40351176)
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Keywords | 協力 / パニッシュメント / 交尾の邪魔 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒトを含む霊長類の協力的な個体間関係の形成・維持メカニズムとして、パニッシュメント(ヒトの怒りの感情表出など)が果たす役割について明らかにすることである。 本年度は、平成15年度より実施してきた、優位オスによる劣位オスの交尾妨害の研究を続行した。優位オスが劣位オスと妊娠可能性が高いメスの近接を発見すると、優位オスは攻撃をくわえることが、さまざまな種で報告されている。このような攻撃はオス間の協力的な個体間関係に影響するパニッシュメントと考えることができる。本年度は、これまでより一般的なモデルを目指し、利得行列を抽象度の高い要素で分析した。その結果、以下の知見を得た。1、優位オスにとって、見逃しや、メス攻撃より攻撃のコストが大きいオス攻撃が進化する可能性が示された。ESS条件の分析からは、劣位オスが攻撃されたとき、劣位オスにとっての妨害される結果に終わった交尾の利益より攻撃されたことによる損失のほうが大きく、かつ、メスが攻撃されたとき、メスにとっての妨害される結果におわった交尾の利益が攻撃されたことによる損失より大きいときにオス攻撃で安定するという結果となった。2、オス攻撃になるか、メス攻撃になるか、見逃しになるかは、優位オスによっての利得ではなく、劣位オスやメスの利得が大きく関係していることが示唆された。この成果の一部は、第21回日本霊長類学会において発表した。またヒトを含めた、生物における協力を引き出すメカニズムとしてのパニッシュメントの役割について、これまでの実験結果をもとに比較の視点から検討した。この成果の一部は第7回日本進化学会で発表した。
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