Research Abstract |
申請者は,高等植物において,新規な輸送小胞を見い出し,その形成メカニズムを詳細に解明することを目的として,タバコ培養細胞BY-2を用いたin vitroでの小胞形成解析とシロイヌナズナ個体および培養細胞におけるGFPマーカーを用いたin vivoでの分子遺伝学的解析を行っている.これまでにおける研究から,タバコBY-2細胞から,細胞膜画分と細胞質画分とを抽出し,それらに,ATPおよび加水分解しないGTPのアナログを加え,30度で30分間保温することで,試験管内でCOPI小胞やCOPII小胞の小胞形成反応を再構成することに成功している.現在までの解析から,細胞膜局在型H^+-ATPaseなどの一群の細胞膜局在型タンパク質が,COPI小胞やCOPII小胞などといった通常の一般的な輸送小胞が形成され得ない条件下においても,依然として,小胞画分に回収されることから,H^+-ATPaseなどを特異的に輸送する新規な輸送小胞が存在するのではないかと考えている.現時点では,in vitro系におけるH^+-ATPaseの小胞画分への回収効率に比較的大きな振れが存在するために,今年度は,反応温度,反応時間,反応に用いたタンパク質の量などの反応条件を振りながら,系として,最大効率を安定して発揮することができる至適条件の検討を行った.現在,この改善された条件下で,系のラージスケール化をはかり,目的の小胞の単離作業を進めている.また,in vivoにおける分子遺伝学的解析のために,現在,H^+-ATPaseをはじめとする幾つかの細胞膜局在型タンパク質のGFP融合タンパク質を恒常的に発現するシロイヌナズナ個体を作製している.これらの個体に対して,細胞内輸送の制御因子の優性阻害型変異体を一過的に発現させて,その効果を観察しつつ,in vivoにおける新規輸送の発見・同定および単離をめざしていく予定である.
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