2003 Fiscal Year Annual Research Report
単細胞緑藻クラミドモナスにおける光合成集光装置遺伝子の電子伝達系非依存的強光応答
Project/Area Number |
15770037
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
寺本 陽彦 独立行政法人理化学研究所, 光生物研究チーム, フロンティア研究員 (90321786)
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Keywords | 光合成集光装置 / クラミドモナス / 遺伝子発現 / 光ストレス |
Research Abstract |
植物は光エネルギーを利用して光合成を行うが、過剰な光エネルギーは細胞に有害な活性酸素の生成を促すため重大なストレス要因となる。光合成集光装置遺伝子の光の強さに応じた発現制御は光エネルギーの入力段階における光ストレス防御機構を担うが、その強光応答機構は明らかではない。単細胞緑藻のクラミドモナスを用いて集光装置遺伝子ファミリーの強光応答に関する研究を行い以下の成果が得られた。 集光装置遺伝子と部分的に相同な遺伝子をクラミドモナスから新たに4個同定し、細胞を弱光から強光に移した後のmRNA量の経時変化を調べた。1個の遺伝子のmRNAは光化学系IIの集光装置遺伝子と同様に強光に移して2-4時間までに減少しその後増加する傾向がみられた。一方、残り3個の遺伝子のmRNAは弱光下では低いレベルにあり、強光に移した後1時間程度をピークとする一過的な増加を示した。このような正反対の強光応答を示す遺伝子は生理的役割が異なると思われるが、初期応答の早さや一過性などタイムコースに共通点がみられ、同じ情報伝達系が関与している可能性が高い。新たに同定した遺伝子のうちの一つは新しい種類の集光装置類似タンパク質をコードしており、その発現の強光応答性は調べた他の遺伝子に比べて著しく高いので、遺伝子発現の強光応答機構研究の良いマーカーとなる。この遺伝子のmRNA量は活性酸素処理によって大きく変化せず、その強光応答は光合成電子伝達系を阻害しても影響されなかった。したがって、電子伝達成分の酸化還元状態や活性酸素がこの遺伝子の強光応答の直接のシグナルとなっている可能性は低い。3種類の集光装置関連遺伝子のプロモーター領域のクローニングを行い、配列を比較したところCとGのくり返しオリゴマー配列が共通してみられるが、厳格なコンセンサスはなく、強光応答遺伝子に特異的な特徴かどうかさらに解析が必要である。
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