2004 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫における空間認知と運動制御:カマキリはいかに鎌を繰り出すか
Project/Area Number |
15770047
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山脇 兆史 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (80325498)
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Keywords | 視覚情報処理 / 運動検出ニューロン / 捕獲行動 / 昆虫 |
Research Abstract |
カマキリにおける空間認知の神経機構を解明するために、本年度は(1)下降性ニューロンにおけるコード化された空間情報の伝達様式、及び(2)餌の空間情報に基づいた捕獲行動の制御機構、を調べた。 (1)脳と胸部神経節をつなぐ神経繊維の束である腹髄から、複数の下降性ニューロンの動き刺激に対する電気的応答を細胞外記録した。その結果、腹髄からの記録はスパイクの形から3、4種類のユニットに分離することができた。全てのユニットは点滅刺激に興奮性の応答を示した。ユニットの視覚刺激への応答は大きく二種類にわけられ、視野の一部での動きに強く応答し方向選択性を示さないユニットと、視野全体の動きに強く応答し方向選択性を示すユニットが観察された。前者は局所的な動き刺激の位置情報をコードし、後者は視野全体の動きの方向情報をコードすると推測される。 (2)自由に動ける状態のカマキリの捕獲行動を高速度カメラによって撮影し、前肢や前胸および腹部の水平方向の動きを解析した。同時に、中肢や後肢の関節の運動も解析した。その結果、カマキリは捕獲行動中に前肢を餌の水平位置に応じて側方へ動かすだけでなく、前胸や腹部も餌へ向かって側方へ動かすことがわかった。この時の前胸や腹部の角度変化は、頭部から計算した餌位置よりも腹部から計算した餌位置と強く相関した。また、捕獲行動時の中肢や後肢の関節の角度変化も、腹部から計算した餌位置と強く相関した。これらの結果は、カマキリが捕獲行動を制御する際に腹部中心の座標系による餌位置を利用することを示唆している。腹部中心座標における餌位置は、視覚による餌位置情報が下降性ニューロンによって胸部神経節に伝えられた後、頚部感覚毛による頭部の向きの情報と足されることで計算されると考えられる。
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