2004 Fiscal Year Annual Research Report
超高分解能X線結晶構造解析でバクテリアのヘム分解反応を見る
Project/Area Number |
15770095
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海野 昌喜 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (10359549)
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Keywords | ヘムオキシゲナーゼ / X線結晶構造解析 / 病原性細菌 / 反応中間体 / 高分解能 / ヘム分解 |
Research Abstract |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)はヘムを酸化的に分解し、鉄、一酸化炭素(CO)、ビリベルジンを生成する酵素である。当初、HOは高等動物にのみ存在すると思われてきたが、ジフテリアの病原体、ジフテリア菌Corynebacterium diphteriaeにも類似の酵素(HmuO)が原核生物由来として初めて発見されたことを皮切りに、他のバクテリアにもHO活性を持つ酵素があることがわかった。特にジフテリア菌、脳膜炎菌等の病原性細菌は、その生存・繁殖に不可欠な鉄を動物組織から奪ったヘムを分解することで獲得しており、そのヘム分解にはHOが使われている。興味深いことに、この酵素が取り込んだ基質は、酸素を活性化するための反応中心として用いられるが、最終的にはその反応中心が分解されてしまうのである。我々は、HmuOのこの特異な反応機構に注目し、その分解過程を原子レベルの結晶構造解析により可視化し、そのメカニズムを詳細に理解することを目的とした。 本研究課題の遂行により、酸化型ヘム、還元型ヘム、酸素化型ヘム、ビリベルジンという4つの中間体を結合したHmuOの複合体とアポ型HmuOの結晶構造を1.4〜1.85Å分解能で解析することができた。これらの構造解析により、反応に必要なプロトンの供給経路や、位置特異的分解のための立体構造的要因など、構造生物学的観点から有用な情報を得ることができた。また、プロトンの供給に重要な役割を担っていると示唆されていたアスパラギン酸136番(D136)を変異させた三つの変異体D136A,D136N,D136F HmuOの結晶構造解析を行うことで、活性中心付近の水分子の重要性を見出した。さらに、一酸化炭素、一酸化窒素をヘム鉄に結合したものの高分解能結晶構造解析を行い、酵素がどのようにそれらの二原子分子を見分けているかを明らかにした。
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Research Products
(4 results)