2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15770098
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
星野 大 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (70304053)
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Keywords | アミロイド線維 / アミロイド病 / β2ミクログロブリン / NMR / 重水素交換 / ダイナミクス |
Research Abstract |
β2ミクログロブリンは、長期血液透析患者において頻出する透析アミロイドーシスの原因蛋白質であり、患者組織に沈着するアミロイド線維の主要構成蛋白質として見い出される。しかし、どのような分子機構によりアミロイド線維を形成するのかはほとんど明らかにされていない。生体内で正常に機能している蛋白質がアミロイド線維を形成する過程には一般にネイティブ構造を不安定化する因子が関与しており、β2ミクログロブリンではそのような因子のひとつとして銅イオンの関与が示唆されている。本研究では、β2ミクログロブリンのアミロイド線維形成機構を明らかにするために、銅イオンによるβ2ミクログロブリンの不安定化機構を、多次元NMRを用いて残基レベルの分解能で詳細に調べた。 様々な濃度の銅イオン存在下において二次元NMRスペクトルを測定した結果、4つあるヒスチジン残基のうち3つ(His13,His31,His51)を中心にピーク強度の現象が見られ、これら3つのヒスチジン残基が銅イオン結合部位として示唆された。さらに銅イオン存在下/非存在下において核オーバーハウザー効果を測定し、速い(サブナノ秒)時間スケールでの運動性を残基ごとに見積もった。また、重水素交換実験を行い強固な水素結合の有無ならびに遅い時間スケールでの運動性を調べた。その結果、銅イオン存在下においてHis51近傍の速い運動性が顕著に増加していること、さらにそれがHis51の存在するDストランドの水素結合ネットワークの崩壊を通して、分子全体の不安定化を引き起こしていることが示唆された。 本研究により、β2ミクログロブリンのアミロイド線維形成反応の初期段階のひとつである、銅イオンによるネイティブ構造の不安定化の機構が残基分解能で明らかにされた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] J.Villanueva, M.Hoshino et al.: "Increase in the Conformational flexibility of β_2-Microglbulin upon Copper Binding : A Molecular Role for Copper in Dialysis-related Amyloidosis."Protein Science. 未定. (2004)
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[Publications] M.Gozu et al.: "Conformational dynamics of β_2-microglobulin analyzed by reduction and reoxidation of the disulfide bond."Journal of Biochemistry. 133・6. 731-736 (2003)
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[Publications] 星野, 後藤: "アミロイド線維の構造安定化機構-ナノスケールの針"化学. 59・1. 50-51 (2004)
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[Publications] 星野 大: "β2ミクログロブリンのアミロイド線維の構造解析"生化学. 75・2. 143-148 (2004)